歴史ニュースウォーカー

歴史作家の恵美嘉樹が歴史のニュースや本の世界を歩く記録です

切腹すべきは慶喜か容保か?今週の新聞書評から歴史本抜き出し!

 きのう(2013年5月26日)の「八重の桜」では、大坂城からとんずら決め込む徳川慶喜のダメ男ぶりがこれでもかと・・・。
 慶喜がクズであることは衆目一致しているところではありますが、 とは言え、どんな人間にも100%のダメとかないわけで。現代史ではそういう人物や事象に1%の理を認めると、右と左から「歴史修正主義!」「自虐史観!」と、飛んでくるのですから、現代史は大変です。

 
 そんなさなか、日経新聞は江戸の歴史といえば野口武彦さん!の『慶喜のカリスマ』を書評。書評した作家の石川英輔さんは「慶喜将軍が大きな責任を背負っていた幕末期の日本社会は、教科書に書いてあるほど単純ではなかったことがはっきりわかった」としています。歴史ってそんな多様な見方ができるからこそ、魅力的なんだと思うんですけどねぇ。

 会津の人にとっては慶喜切腹もんでしょう。
 産経新聞の書評は、『切腹の日本史』が載っています。
 戦国から平成まで200例の切腹が淡々とコンパクトに書かれた新書だそうですよ。うーん、微妙。

 実は戊辰戦争直後は、会津の人たちは「なぜ松平容保切腹しないのか」と元殿様に不満爆発寸前だったのですが(byアーネストサトウ)、いまの会津の人は容保についてはお許しのようで笑 

 毎日新聞では今年から書評担当になったわれらが磯田道史さんが(たぶん)2度目の登場。当ぶろぐでもおなじみの隕石ネタです。

 その本は『大隕石衝突の現実』(ニュートンの別冊)
 空から星が落ちてくるのを心配するのは「杞憂」というのですが、実際には50〜100年に1度、20〜30メートルサイズの隕石が地球に落ちているそうです。人生80年で地球上に1回なら、インターネットの発展した現代ならいざしらず、ほとんどの人にとって「絶対落ちてこないもの」ですね。
 ところが、数万年に1度の割合で、イトカワ級の500メートルの隕石も落ちていて、1000キロ先の海に落ちても数十メートルの津波が押し寄せるパワーなのだそうです。
 東日本大震災でようやく防災意識が100年以内から「1000年に一度」まで伸びましたが、さてさて数万年に一度のために空を見上げ続けないといけないのだから、大変です。そこのお嬢さん!スマホばかり見ていると、マンホールに落ちますよ!
 磯田押しの本はとりあえず購入。

 毎日新聞では、東大史料編纂所山本博文さんの『続・日曜日の歴史学』も載っています。信長、光秀、秀吉、家康4人の天下人の書状を読み込む内容。これは即購入。したところ、「それもう買ってますぜ」のアマゾンさんのご忠告。ああ、積ん読でしたか。さがしてみましょ。

 読売新聞では、あまちゃんのおかあさん=小泉今日子さんが「鳥と雲と薬草袋」という随筆をご紹介。ええなあ、春ちゃん(byだいきちさん)。
 なんで、いいかというと、地名の元について書かれた本らしいんですよね〜。

 まなざしからついた地名、「鶴見」、「富士見」。
 文字によりかからない地名、「由良(ゆら)」「田光(たびか)」
 温かな地名、「椿泊(つばきどまり)」「小雀(こすずめ)」

 パチンコでくだまいている主婦(春ちゃん)とは思えない名書評ですねぇ。



 あとは万葉学者の上野誠さんが書評する「日本の恋の歌」(上下)。上野さんの書評は実にいいですね。研究者ぜんとしていなくて。

 本書は、極めて良質な恋歌の和歌史なのであるが、そんな読み方は低級だと思う。
 むしろ、男たち、女たちは、どう恋と格闘したかという、恋愛格闘史として読むのがいい。
 たぶん、元良親王和泉式部が友達だったら、困った友人になったはずだ。

 こんな感じ。

陰謀史魂に火がつくぜ

 毎日新聞の『ロシアとソ連』は書評だけでOK、でした。自分の興味的には。
 帝政ロシアソ連、そして現在に至るまで、資本主義、革命、また資本主義と、そのプレーヤーとなっていたのが、ロシア正教の少数派(異端?)である古儀式派が担っていたという内容のようです。
 なんか陰謀論的に面白そうだけど、そのうちもっと詳しい書評がネットで出そうなので、それを読めばいいかなと。3200円(税抜き)


 陰謀マニアむけでは、読売新聞の『M16秘話 イギリス秘密情報部1909−1949』が載っていますね。
 英国政府に任命された公式歴史家が秘密文書の利用を許可されて書いたものだそうです。これはなかなかアツイですね。これもネットで詳細な書評があがるのを首をながくしてまとうっと笑(これも上下各3200円)

ほんまかいな?

 朝日新聞の『民俗と民藝』(講談社選書メチエ
 真理や真実と訳されている「Truth」という英語の訳語の候補として、「本真」とかいて「ほんま」というのがほんまに候補になっていたそうです。それで満足しちゃいました。すみません、民俗学柳田国男さま、民藝運動柳宗悦さま。


 先週、どこかで出ていた『犬の伊勢参り』(平凡社新書)は読売にも出ています。これで2冠。

 ほかにはどこかに短く載っていた 『レンズが撮らえた幕末日本の城』(山川出版社、1800円)も買いました。安いし。 
 今週は充実のラインナップでした。
 参考)アマゾンは歴史系の在庫がきわめて少なく、書評された週は在庫きれてますが、楽天ブックスにはたいていあります。


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