【書評の評】「林羅山」ミネルヴァ書房
林羅山: 書を読みて未だ倦まず (ミネルヴァ日本評伝選) 鈴木 健一 ミネルヴァ書房 2012-10-27 売り上げランキング : 16800
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去年、「天平グレートジャーニー」で”小説家”デビューした人ですね。
天平グレート・ジャーニー─遣唐使・平群広成の数奇な冒険 上野 誠 講談社 2012-09-21 売り上げランキング : 54779
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上野さんの初めてのお遣い(今、テレビで初めてのおつかいみていたので)、いえいえ初めての書評がきのう(2013年1月13日)の新聞に出ています。
とりあげるのは、
鈴木健一『林羅山』(ミネルヴァ書房、3150円)
です。
儒者というのは、江戸幕府の知的な「犬」。現代でいう御用学者と言われていて、家康に仕えた林羅山はその筆頭だ、というわけです。
上野さんは、筆者としての自分を貶めるところから始めるのは見事ですね。
ぐんと身近な人に感じました。
これからも楽しみですね〜。
この本より、「つんどく」している天平グレートジャーニーの続きを読みたくなりましたよ。
ただ、「林羅山=御用学者」というのが一般的な常識なのかなぁ、とは思いましたけどね。
「林羅山=聞いたことある有名な儒者」くらいがふつうなのでは。
一部引用してみます。
かつて、阿倍仲麻呂について調べていた時のこと。仲麻呂伝について、林羅山(1583〜1657)の研究が凌駕されるのは、1940年代だと気付き、唖然としたことがあった。と同時に、私はこんなセリフをつぶやいた。「しょせん御用学者だろ」と。
「御用学者」という言葉は、侮蔑的にしか使わない言葉だ。その「御用学者」の代表、林羅山の評伝に、凄腕の国文学者が挑んだ。
驚いたのは、羅山が学問を始めたころは、儒者の地位がまだ低かったという点だ。
つまり、本書の羅山は戦う男なのだ。じつは、儒者が幕府内に安定した地位を得たのは、彼の孫の世代なのである。その戦う男の心を「出世するために自分の学問を利用する」「書物を読んだり、文章を書く生活を続けるために、社会的な地位を確保したい」との二つの葛藤から描き出したのが本書である。