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歴史ニュースウォーカー

歴史作家の恵美嘉樹が歴史のニュースや本の世界を歩く記録です

犬の伊勢参りがついに3大紙の書評で三冠達成!【今週の歴史本書評】

 週なかばになりましたが、恒例の新聞書評のピックアップです。堅い本が多かったのでちょい辛め。

 5月の歴史本ランクでも10位にすべりこんだ仁科邦男著『犬の伊勢参り』(平凡社新書)は、読売、朝日に続いて、今週は毎日にも登場して、とうとう三冠達成です!パチパチ。

 しかし、この偉業に平凡社は無視しているのか、書評された本はまず買えない在庫なし書店アマゾンだけでなく、ほかのネット書店ものきなみ轟沈。ビジネスチャンスを失っております。歴史本の悲哀を感じさせますなぁ。

ゲスすぎる腐女子による腐女子視点の腐男子研究の書評

 朝日新聞は、自他共に認める腐女子作家・三浦しをんさんが『立身出世と下半身 男子学生の性的身体の管理の歴史』というゲスでまじめな研究書をとりあげています。

 恋や性的行いは、立身出世を果たしてから思う存分すればいいのである。
 そんな無茶(むちゃ)な。しかし大人は(女遊びしている自身を棚に上げ)、「花柳界に足を踏み入れるな」「自慰をするな」と学生たちに要求する。しまいには、高等学校などの入試において、身体測定とともに性病検査(通称「M検」)が行われる。全裸の男子学生の性器に、医者などがじかに触れて、性病にかかっていないかチェックするのだ。余計なお世話感満載!

 と、こんな感じ。
 著者の渋谷知美東京経済大准教授(社会学)はほかの著書に『日本の童貞』があります。まあ、なんともニッチな研究者です。

 どんな女性かまったく知りませんが、東大卒社会学者の自宅警備員金田淳子さんを想像しました。
金田淳子とは - はてなキーワード

 かってに渋谷さんも腐女子認定してすみません。妄想です。


 ほかに、朝日で取り上げる『亡びゆく言語を話す最後の人々』や『経済と人類の1万年史から21世紀世界を考える』なども少なくとも二冠ですね。

 戦争ものでは、保阪正康さん書評の永井均『フィリピンBC級戦犯裁判』(講談社メチエ)なんてのもあります。

戦後にフィリピンのあるメディアは、日本軍の「集団拷問や集団処刑、略奪、焼き払い、強姦(ごうかん)を経験した後には、フィリピン人は日本人をもはや人間と見ることをやめ、殺すべき相手(略)として見るようになった」と書いた。こういう空気の中で、フィリピン政府は、アメリカからの独立後にBC級裁判を行うことになった。

でも、その後、妻子や親族を日本軍に惨殺された大統領が恩赦したんだそうです。ふーむ。
右翼の方も、左翼の方もぜひどうぞ。

さらに、『地球全史の歩き方』の著者、白尾 元理のインタビューも載っています。
 とてもひとりでは足の届かない地球の歴史を読者にかわって歩いてくれました。

手が届かない世界

 今週の読売の書評は濃いですね、いろんな意味で。主には高価で入手しがたい本が多いという点で。

 ひとつ目は『能を読む』、梅原猛なら仕方ない。それに、書評する本人(万葉学者・上野誠さん)が「1冊あたり600頁。値段も高い。しかし、こういう本が4冊シリーズで出版されるところに能という芸能の大きさ、深さがあるのだろう」と、分かっているのだから仕方ない。各6500円*4冊です。(あっ、でもこの間、買った書の字典は3万だった・・・。)

 じつはこのシリーズ入門書なのだそうです。
 まあ、2400頁読まないと、門をくぐることも許されない(ってこともないけど)敷居の高さをどうしていくか。私も1年に1頁分くらいのペースで能の勉強をしています。はあ、あと2390年くらいか。
上野さんは

当日の演目の部分を、座席で見るのはやめてほしい。たしかに、よくわかるかもしれないが、その場で感じることが、一番大切なんですから!

 と書きます。
 いや、まあわかるんですけど、1万払って、なにも分からないというのは、現代ではなかなか許されないのではないでしょうか、家計的に(涙怒)

 恵美嘉樹はなにを怒っているんだ?と。次への伏線です。

 経済学者の中島隆信さんが『怒らない禅の作法』を書評。これはおもしろい。そして安いw(1200円)

 お寺の山門は俗世と聖域の境界で、賛同は両者の切り替えを準備する場だとみなされる。それなら、帰宅のさい、下車駅の改札を山門とし、そこを過ぎたら「俗(仕事)モード」から「聖(リラックス)モード」に切り換えたらどうかなどと提案する。

なかなか使えるアイデアですね。


つづいて、国際政治学者・田所昌幸さん書評『オーケストラの音楽史』。
オーケストラが確立したのは、ハイドンの時代、18世紀後半だそうです。試験もしくはクイズに出ますよ〜。原著は1936年。うーん、もう古文書。

 きわめつけが、読売の社会学者・橋爪大三郎さん書評の『蘭学家老・鷹見泉石の来翰を読む(蘭学篇)』(片桐一男/著|鷹見本雄/発行)は自費出版、7000円。
 本屋で売っていません。アマゾンはもちろん。
 かろうじて下の自費出版屋?さんで買えます。
http://www.i-bookcenter.com/id/sale-020.html

蘭学家老・鷹見泉石の元に全国の著名人から届いた数千通の書翰の中から、蘭学に関するものを約100通厳選して解読していく画期的な書籍。

 知名度低いですが、江戸後期の武士で洋学者です。
 茨城の古河藩の家老で、藩主が大坂城代だったときには大塩平八郎の乱を鎮圧している武闘派。
 それなのに、ロシア語、英語も学んだ知性派。黒船がきたときには開国を幕府に提言している国際派でもあります。
 手紙の影印を載せて、その下に判読文、さらに注釈というスタイルになっていて、古文書の読解練習用にもいいようです。ですが、7000円、自費出版


 毎日新聞でも手の届かない(この新聞の書評の場合はそれがデフォルト)書評(演劇評論家の渡辺保さん)、『京舞井上流の誕生』。京都の出版社思文閣出版からで、9450円。

 まあ、演劇史には重要のでしょうけど、数百万の読者にむけて、超大で深淵な専門知識をひけらかすことは、活字の文化の復興にはあまり役立たないと感じます。

 井上流とはなんぞやと延々と説明して、最後に「小説や史伝を読むが如くイキイキとして、私は大いに想像力を刺激された」とか、カタカナつかって書いてみても、ぜんぜん柔らかくないです。

 やっぱり、書評は「本って面白そう」ってなってほしいんですよね。

 そんななか、歴史じゃないけど、高橋秀実『男は邪魔!』(光文社新書)が読売に小さく紹介されてました。リアル男版発言小町として有名?な高橋さんの爆笑エッセー。立ち読みして、ふいた。買った。これぞ良質な読書体験。

 また来週〜

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