歴史ニュースウォーカー

歴史作家の恵美嘉樹が歴史のニュースや本の世界を歩く記録です

福島県の神社から陸奥NO1神社の地位が宮城県に奪われた理由とは【一の宮】

 一の宮というのは、各地域のNO1の神社です。一の宮、二の宮、三の宮くらいまで、各国(阿波国とか長門国とかの旧国)にあります。
 ただ、国が指定した制度ではないので、昔は一の宮だった神社も、その後の盛衰によって、ほかの神社に奪われてしまうことも多々あります。
 世の中的にほぼ完全に奪われてしまったのが、陸奥国武蔵国です。
 
 たとえば、武蔵国というのは、東京、埼玉、神奈川北部という日本の人口的に圧倒的な巨大な国ですが、そこの一の宮は、小野神社。
 東京の多摩川沿いにひっそりとある宮司さんが常駐していない小さな古社です。
 ふつう武蔵一の宮は、JR大宮駅の名称の由来である大宮こと氷川神社さいたま市)です。

 でも、ここは本当は三の宮です。下克上ってことで。

 同じように陸奥一の宮も、ふつうは陸奥国府のあった多賀城を守る塩釜神社とされています。


 しかし、陸奥の場合も、本来の一の宮福島県棚倉町という南端にある都々古別神社(つつこわけじんじゃ)だったのです。

 地元の新聞(福島民友新聞)のきのう(2013年4月7日)のニュースにすら一の宮と書いてもらえないとは悲しい……

県内最古の「三間社流造」 棚倉・馬場都々古別神社本殿

 会津藩家老の西郷頼母(たのも)が宮司を務めたとされる馬場都々古別(ばばつつこわけ)神社(棚倉町)の本殿が、室町時代末期から安土桃山時代のものとみられることが6日までに、同町伝統文化活性化委員会の調査で分かった。同委員会によると、同神社本殿の造りは「三間社流造(さんげんしゃながれづくり)」と言われ、同様の建築様式の中では県内で最古の建物に属するとみられるという。

 同委員会によると、文献や本殿の劣化状況、中世にみられる簡素な技法から建築時期を判断。昨年から専門家に委託し、調査を進めてきた。
(略)
 文献によると、同神社本殿が1594(文禄3)年に造営された可能性が高いとされている。
(略)
(2013年4月7日 福島民友トピックス)

どうやって一の宮が奪い、奪われたのかというのは、むろんはっきりと明示されるような史料はないのですが、歴史的な状況を見ていくと、だいたい想像はつきます。

陸奥の場合は、日本(ヤマト)の国境がもともとは福島県と茨城・栃木県境にあったのが、どんどんと北上して、多賀城付近まで持ち上がり、それに伴い、国境線を守る強力な神社も移動していった、、、など。


詳しくは拙著にも書いてありますので、よかったらどうぞ。↓
ちなみに、一の宮の座をめぐり各国で、いまなお激しい接戦が続いている地域こそが、修羅の国、九州です。

単純に神社というだけでなく、
神道・神話・神社の創建の経緯などの中から
内容が重複しないように、面白い話を選抜して書いてあるので飽きません。
神社紹介本を何冊か読みましたが
神社=ツマラナイという図式をそのまま文章にしたような――

――厳粛な空気が!とか荘厳な雰囲気が!とか、考えるより感じろ!みたいな…
――感じればいいのなら、行ってから感じるわ〜、そんなこと書かんでいいのに…

的なものが多い中で、この本はズバ抜けて面白いと思いました。
一宮めぐりなんてフツーの社会人だったら実際には出来ませんからね。
コレ読んでおいて、近くに出張あったら行きたいなーとか
旅行で寄ってみたいナーなんて妄想するにはピッタリ。
一気に読んでしまいましたわ〜
(amazonレビューより)

Wikipedia「都都古別神社」より

棚倉町には「都都古別神社」と称する神社が2社、馬場と八槻大宮にある。どちらも同じような由緒を伝え、同じ祭神を祀り、名神大社陸奥国一宮を称しているが、共通の祭事はなく、別の神社である。このように「都都古別神社」がなぜ同町内に2社あるのか、その理由は不明であるが、現地では両社を区別するため鎮座地名をとって馬場都都古別神社(ばば―)・八槻都都古別神社(やつき―)のように呼んでいる。同じ久慈川沿いにある馬場都都古別神社、八槻都都古別神社と近津神社と合わせて近津三社と言われ、馬場都都古別神社は上之宮、八槻都都古別神社は中之宮とも呼ばれる。(wikipediaより)

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