坂本龍馬が「新国家」と言ったという新出史料は怪しいと思う
坂本龍馬の新しい書状が見つかったそうです。
この手の来歴のわからないものについては、とりあえず「怪しい」と思うのが、歴史にたずさわるものの流儀だと思うので言っておきます。(というか、偽物の話が大好き)
大政奉還から150年という年に合わせて、見つかるというタイミングもさることながら、
高知県がなぜ龍馬についての資料の悉皆調査を研究者でなく、企画会社に頼むのか。
そして企画会社はなぜ見つけた資料を自分が購入してしまうのか。
意味がわかりません。
過去の人の文字に似せて毛筆で書くことは、ある程度の技量の持ち主ならば可能です。
それを見破るのは、歴史家ではなく、本来は書道家です。
歴史家は書の専門家ではないので、過去のその人の真筆といわれるものとを見比べて大きな矛盾がなければ「真」とするしかないと思います。
でも、書の世界では違います。
書の世界は、先人の筆跡を真似して書くのがスタンダードな技術だから、似ていて当たり前、似ているから真筆とはしません。
「国家(こっか)」って幕末にもう流通していたの?
ここから先は全くのフィクションです。
下のニュースを見て、もしもこの書状を最近書いちゃった人がいたとしたら
「あちゃー」と思っているかもしれません。
「新国家」って単語はもしかして幕末にはない「オーパーツだった?」とドキドキ。
「国家」という単語は、幕末においては「日本国」とか「アメリカ国」とかいう意味ではなく「くにけ」と読んで「地方から江戸に出てきた武家。国衆。国武士」(日本国語大辞典より)という使い方をしていたんだと思うんですよね。
もっとも、未来が見えるスーパー維新の戦士坂本龍馬さまですから、福沢諭吉がどんどん英語の概念を日本語化するより早く、考えついていたってことも当然ありますね、うん。いやむしろ英語を独学で学んだ福沢諭吉は坂本龍馬さまから英語を教えてもらった可能性だってありますわね(棒読み)
3年前に見つかった書状の続編です!って映画かっ!
また、なによりひっかかるのが、今回の書状では、3年前にNHKのバラエティ番組で偶然みつかった新出の龍馬の書状に出てくる登場人物が「主役級」となっているからです。
それまで、龍馬と福井藩士の三岡八郎の関係はあまり脚光を浴びていなかったのが、今回は突如、クローズアップされていて、前回見つかった書状の「続編」とでもいうべき内容です。
この3年間に見つかった2通の手紙が、1通目の続きである、と。
そんな都合のよい展開を、歴史に関わっている人間は容易には認めないというだけのことです。
なんたるへそ曲がりでしょう。
「◯◯の変は△△の陰謀だった」とかの本でベストセラーを書きたいんです、本当は!(笑)
紙が新しいって?地中に埋めてなかったからだYo?
ふつうは著名人の手紙は遺族が持っているとでもない限り、封書の中に入ったままなんてことはないです。
では、今回の書状がなぜ不自然にも封書に入っているかというと、理由は簡単です。紙がピカピカで新しいからです。
贋作作りのプロは、何年も地中になにも書いていない和紙を埋めてタイムマシーン状態にして「ふるっぽい」紙をたくさん用意しておくものです。
「新国家」というナウでヤングな響きの言葉の使い方やきれいな真っ白な紙に書いていることなど、わたしのようなものにでも突っ込まれるのは、本当のプロフェッショナルの仕事ではないかもしれません。
つまり本物ということですね、うん!(←日和ってみた)
西郷隆盛についての書状は来年発見されます
ただですね、古書店では、都合のよいタイミングで売り出されることはよくあります。それは、古書店がワインのように寝かせているからです。
来年の大河ドラマは西郷ドンですか。そうですか。
えっ?あれも偽物なのかも?
って驚きたい人はこちらの本がオススメです。
内容については過去記事をご参照ください。
この書状は、高知県から調査を依頼された企画会社が明治維新関連の資料について精査をする中で、コレクターから購入したということです。
大政奉還からことしで150年になることなどに合わせて、高知県内では3月から「志国高知 幕末維新博」が開かれる予定で、県は会場に展示する新資料を探していました。
コレクタ-が書状を入手したいきさつについて、企画会社は「個人情報や入手経路を一切言わないという条件で購入した」として明らかにしていません。(略)
書状は折り畳まれ、封紙に包まれた状態で残されていました。封紙には、龍馬の変名である才谷楳太郎という名前が書かれているほか、「坂本先生の遭難直前の書状で、他見をはばかる」という内容の朱書きのある付箋がついていたということです。