龍馬暗殺の真犯人は変則二刀流の達人。その名も「桂三枝」っぽいぞ?!
きのう、ああ、もうおととい(2013年5月8日)ですね。NHKの歴史秘話ヒストリアは「坂本龍馬 暗殺の瞬間に迫る〜最新研究から描く幕末ミステリー〜」というテーマでした。
ポイントは、
- 実行犯は幕府の警察組織「見廻組」(コントロールしていたのは京都守護職の会津藩)
- 幕府からのお尋ね者だった龍馬だが、大政奉還によって幕府がなくなったのでもう狙われていないと思っていた節がある
- むしろ徳川家を助けようと徳川重臣のところに堂々と出入り
- それを見た見廻組が「ぶち切れ」(前に仲間を龍馬に2人殺されているから)
- 見廻組は偽名をつかって隠し部屋に堂々と客人として一人で入り、(敵意がない証拠として)長刀を横に置いて龍馬の前に座った
- しかし、この刺客は小太刀を必殺の剣とする二刀流の達人であった
と言ったところでしょう。
なので、今回の主役は龍馬ではなく、この謎の二刀流の使い手、桂隼之助(早之助)くんなのです。
非常に気になる新キャラとして、これからの幕末レアカードとなることでしょう。
今回の番組に登場した研究者は二人いまして、
霊山歴史館の木村幸比古さんと、「武士の家計簿」の磯田道史さんです。
お二人の龍馬暗殺の著書からTVになかった話を探して載せていこうと思います。
リアルタイム(笑)に更新(打ち止め〜)していきますので、ちょこちょこ見に来てください。(5月14日の午前1時45分から再放送らしいですよ。上のNHKのHPでチェックしてください)
なお参考書は下の2冊です。
龍馬暗殺の謎 (PHP新書) | ||||
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龍馬史 | ||||
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襲撃犯の構成
見廻組が実行犯というのは、確定としまして、斬った男は桂くんにまだ決定しているわけではありません。
実行犯は複数いて、しかも7人。7人の侍です。
隊長の佐々木只三郎、以下、桂隼之助、渡辺吉太郎、高橋安治郎、土井仲蔵、桜井大三朗、そして「見廻組犯行と明治に告白した」今井信郎です。今井以外は全員、鳥羽伏見の戦いで戦死しています。
このことから今井は戦死した人に罪をかぶせた可能性があります。実際、渡辺篤という人物も「俺が襲撃した」と告白しています。
(磯田167p)
このうちの誰かが龍馬の頭をすぱっと斬ったわけです。今井は「俺がやった」といったのですが、天井の低い隠し部屋で長い刀を振り回せないことから、小太刀の名手である桂隼之助と渡辺吉太郎(もしくは渡辺篤)にしぼられていきます。
で、NHKでは桂隼之助がその人と断定しています。渡辺だと、吉太郎なのか、それとも篤なのか、非常にややこしいことになるから、と恵美嘉樹は邪推しています笑(磯田、木村の両著書では桂が斬ったと断定していません)
番組でも出ていましたが、霊山歴史館に1994年に寄贈された桂の履歴書(由緒書き)があります。(木村著書より、キンドルで読んでいてページ数分かりませんすんません)
その功績はすごいです。
17歳で西岡是心流の目録を渡され、京都文武場の剣術の准教授(世話心得)に抜擢。
29歳の時には、二条城で行われた上覧試合では京都所司代の代表として出場し、ことごとく撃破して、将軍家茂から白銀5枚をもらっている。
新撰組による池田屋事件にも参加して、浪士を捕縛して、報奨金5両をもらっている。
この功績から、本来はなれなかった(桂の職業は二条城の門番)見廻組へと抜擢された。
こんな感じ。
もう一人の実行犯候補の渡辺篤についても履歴書があることがわかっています。(以下は木村参照)
この履歴書の原本が書かれたのは今井の告白以前です。存在がわかったのは1978年と最近。
原本には 「7人で夕方より龍馬の宿へ踏み込んで、5、6人と戦ったがすべて討ち果たした」という内容が書かれていました。
ここでひっかかるのは、5、6人も敵(龍馬達)がいなかったということです。のちにまとめられた履歴書では襲撃者数が6人になったり。
また、暗殺時の様子については「正面に座った龍馬を斬りつけたら、横に倒れた。両側に別の2人がいたが、同時に討ち果たした。そのうちの一人が中岡とあとで知った。従僕も即死だった」などとしています。部屋には従僕はいなかったはずですが、と色々変な部分も残っています。
そのため、渡辺篤の告白は信用しないという研究者もいるそうです。
渡辺篤も、桂と同じく西岡是心流で、18歳で免許皆伝という強者。同じく上覧試合で銀5枚もらい、文武場の准教授になっています。ほとんど桂と同じ経歴ですね。
最大の違いは、維新後も生き残ったこと。73歳で死んでいます。
なんで見廻組犯人説が定説になったのか
NHKでも「専門家の中では見廻組犯人説に異論はない」みたいなことが言っていましたが、世の中的には、「新撰組」ですよね〜。
新撰組説は
A)龍馬と一緒に討たれた中岡慎太郎が「新撰組にやられた」という言葉が一番の原因です。
ほかに
B)瓢箪の印のついた新撰組のげたがあった。
C)数日前に新撰組を奪回した元メンバーから「新撰組が狙っている」と龍馬に忠告があった。
ただ、これは
AとCは「中岡慎太郎ですが、彼の証言はうのみにできません。・・・彼はひどい傷を負って混濁状態です。・・・中岡はいろいろ証言するけれど、冷静にいると、うわ言に近いものもある」(磯田172P)
Bは「海援隊の人間が大騒ぎして人を呼び集めたものだから、階下には下駄が脱ぎ散らしにされました。ですから誰の下駄やら草履やら、もはやなにやら分からない状態になり、・・・瓢箪印の下駄が本当に侵入者の物とはいえないのです。」(同上)
からもそれぞれ否定されています。
(もちろん最も否定された理由は元見廻組の今井らが「俺たちがやった」と告白したからです)
なぜ幕末が分からないのか
ところで、幕末は大好きだけど、歴史としてはよくわからんという人は少なくないでしょう。幕末といえば、「尊皇攘夷」。これに対するのが「開国」。
この教科書的な理解が、幕末を理解できなくさせています。
孫正義から怒られるかもしれませんが、ぶっちゃけて言いましょう。
「幕末の志士は龍馬を含めて全員、なーーーーーんも思想なんか持ってませんんんんんん!」
や、やばい。言ってしまった。もう歴史界で生きていけないかもしれない。
まあ、ともかく、「尊皇攘夷派」「佐幕派」「開国派」とかの区分けをしていると、なにがなんだか分からなくなるのは事実です。
薩長同盟やら、新撰組から分裂したグループが龍馬とお友達になったり、昨日の敵があすの味方、逆もまたしかり。
これはみな20代、30代の若造たちによる思い付きだからです。思想があるふりをして、その時々の自分の事情で動いていくのです。
彼らが時々にあげるお題目にいちいち反応せずに、その裏にある「生きたい」「偉くなりたい」「名を上げたい」「かっこつけたい」などの心を読み解けば、すらすら幕末が理解できます。
でも笑ってはいけません。
「小泉改革万歳」
↓
「政権交代で暮らし安心クラシアン」
↓
「アベノミクスサイコー」
ひとしく、われらは幕末の志士の子孫なのです。
【幕末エントリー】