毎日出版文化賞に東野治之『遣唐使』
第62回毎日出版文化賞が2008年11月4日発表され、歴史書では、「人文・社会」部門で、東野治之(奈良大教授・古代史)の『遣唐使』(岩波新書)が選ばれました。恵美嘉樹の片割れも昨年、発売されたときから「これは面白い」と話していましたので、書評も追加します(はず)。
- 作者: 東野治之
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2007/11/20
- メディア: 新書
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◇外交史上の意義問い直す
われわれが教えられた遣隋使・遣唐使像は、ナショナリズムによって随分歪(ゆが)められていたようだ。「日出(い)づる処(ところ)の天子、日没する処の天子へ……」は仏典を借用した東・西関係を示す文飾にすぎないという。また中国皇帝とその臣下の日本国王の関係を明記せざるをえない国書は持参されなかったというのは誤りであったことなどから始まって、目を洗われる思いの連続である。
東アジアの縁辺の小国で多くを中国に学ばなければならない若き日本が、そのプライドを保ちながら中華帝国といかに交わったか。そのための智恵(ちえ)が建前と実質を使いわけるダブルスタンダードの採用にほかならなかった。
遣唐使の文化史的重要性を再認識させるとともに、その外交史上の意義を問い直している。個人的な好悪に関(かか)わらず、わが国は中国と友好的に交わらなければならない。古代日本の為政者たちがどのように中国と交わったかは、現代の日中関係を考えるうえにも貴重な示唆を与えてくれよう。確実な史料の確かな読みに基づく実証的な歴史研究の大切さをあらためて認識させてくれる。(白石太一郎)
『「日出(い)づる処(ところ)の天子、日没する処の天子へ……」は仏典を借用した東・西関係を示す文飾にすぎないという。』というくだり。
いやいや、白石教授が知らないわけないでしょう!
と突っ込みました。