中国の「バカ盛り」をまねした嵯峨天皇
東野治之さん、毎日出版文化賞受賞おめでとうございます!『遣唐使』はいずれ近いうちに紹介いたしますね。
ところで、歴史書コーナーにある『歴史書通信』というフリーペーパーをご存知ですか。歴史書の出版動向がわかる有益な情報と、冒頭のコラムが特徴。なかなか面白い内容が掲載されます。
今回のコラムは佐藤全敏さん(信州大学准教授)の平安時代の食事作法についてです。佐藤さんは京都の下鴨神社でおこなわれる葵祭(あおいまつり)で、神様にささげる食事に注目します。
前菜はごま油であげたお菓子やお酒。メインディッシュではなぜか高く円柱のように盛られたご飯。最後にはデザートなどがあったといいます。「円柱」の不思議なご飯。これらは古代中国・唐の作法でした。コラムの文章中に図がそえられていますが、そのご飯の見事な盛り。高く山盛りに聳え立ったチャーハン、それがお膳にいくつもあります。「ギャル曽根」ではありませんが、「元祖バカ盛」は先進国・唐の礼儀正しい盛り付けだったようです。
前菜のごま油のお菓子もある時期に中国から取り入れられたようです。それまでは油で揚げるという調理法はなかったため、はじめて口にした貴族は油の不思議な味覚にびっくりしたに違いありません。
こうした中国ナイズした食生活、食文化は、平安時代の初めにすっかり中国かぶれしていた嵯峨天皇が導入したものだったようです。
椅子に腰掛けて、朱塗りのテーブルのうえに並べられた銀の食器やスプーンで、山盛り円柱型のご飯を食べる
これが中国風だったといいます。こうした作法が今の祭りに残っているというのもなんとも面白いですね。嵯峨天皇は、平安京に遷都した桓武天皇の子になりますが、中国かぶれだったことで有名です。はじめての勅撰漢詩集ができたのも嵯峨天皇の命によるものでした。中国の山盛り食事が取り入れられたのも、嵯峨天皇が「中国大好き」だったためでしょう。
このコラムを書いた佐藤さんは、「食事から平安時代を考える」という変わった手法の研究で注目されており、次のような研究書を出版されました。
- 作者: 佐藤全敏
- 出版社/メーカー: 東京大学出版会
- 発売日: 2008/03/15
- メディア: 単行本
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本書は今年の朝日新聞5月に大きく紹介されたのでご記憶の方もいるかもしれません。記事では、職員のマニュアルや貴族の日記、食材調達の木簡などを読み解いてまとめたもので、「前例のない視点からの研究」(鈴木靖民・国学院大教授)とのコメントもあります。
未読ですが、なかなか面白そうな切り口です。内容もさることながら、なかなかお値段もビッグですが、ぜひ読んでこのブログで紹介したいと思います(いずれ)。