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歴史ニュースウォーカー

歴史作家の恵美嘉樹が歴史のニュースや本の世界を歩く記録です

60年ぶりの式年遷宮の出雲大社にオオクニヌシが戻ってきましたよ【動画&写真まとめと大国主物語ダイジェスト】

 きのう(2013年5月10日)の夜に出雲大社で「本殿遷座祭」が行われました。祭神の大国主命が新しくなった本殿に帰る儀式です。1万2000人が参列しました。

 地元の日本海新聞によると、千家尊祐宮司が「御本殿の荘厳なたたずまいが見事によみがえり、無上の喜びを感じている。先人たちが育み伝えてきた伝統的精神文化のよみがえりが図られ、未来に向かっての清新な生成発展への始まりとなるよう一層努めたい」との談話を出したとのことです。


【動画】

(38秒)

(59秒)

(7分32秒)

(参考「復元された本殿公開)

【報道】
NHK

60年ぶりに社殿などを大規模に改修する「平成の大遷宮」が行われている島根県出雲大社で、改修が行われた本殿に祭神の大国主命を戻す「本殿遷座祭」が10日夜、行われました。


日本海新聞


 午後7時ごろ、ご神体が移されていた仮殿で千家尊祐(せんげたかまさ)宮司祝詞を上げた後、ご神体をみこしに移し、正装した神職ら約260人の行列が出発。一行は明かりが落とされた境内をゆっくりと進み、ご神体を本殿に移した。

読売新聞

 本殿前の楼門、八足(やつあし)門の提灯以外の明かりが落とされた中、千家尊祐宮司天皇陛下のお使い、神職ら約260人が行列をなして、神輿みこしに載せたご神体を白い幕「絹垣(きぬがき)」で囲んでゆっくりと本殿へ。

朝日新聞(6枚の写真で儀式が順番にわかるようになっています)

 約1万2千人の招待客らが見守る中、修繕中にご神体をうつしていた仮殿から神職16人に担がれたご神体のみこしが出発。境内をゆっくり周回した。本殿前の二つの門をくぐったご神体が本殿に入った後、神職の「おー、おー、おー」という声が響き、御神座への大国主神の帰還を告げた。

 毎日新聞は9枚の写真グラフです。

出雲大社オオクニヌシの復習

 拙著『日本の神様と神社-神話と歴史の謎を解く (講談社プラスアルファ文庫)』からオオクニヌシの項目(48〜55頁)を抜き出します。もっとほかの神様の神話と歴史の接点が気になる人はぜひぜひ買ってくださいませ!
 
【地上初の天下人は苦労人】
 スサノオが出雲に降臨してから長い長い時間がたち、ようやく地上に「王」が生まれた。最初に日本列島を支配したのは、アマテラスの子孫ではなく、スサノオから数えて6代目のオオクニヌシであった。
 オオクニヌシ出雲大社にまつられる偉大な神で、日本神話の中でも特に知名度が高い。数々の困難を乗り越えて成り上がっていく物語には、たくさんの古代史の謎を解き明かす鍵がちりばめられている。

 出雲神話の舞台は日本海側の山陰地方である。では、いつの時代の歴史が反映されているのか探ってみよう。

 出雲最大の謎は、オオクニヌシの”天下統一”までのプロセスについて『古事記』では詳述されているのに、ヤマト王権公認の歴史書である『日本書紀』ではほとんど触れられていない点だ。

 日本書紀が必死に隠蔽工作を行った一方で、記紀以上に地元の「いい分」が盛り込まれている歴史書も残っている。712年にできた『古事記』から約20年後の733年に完成した『出雲国風土記』である。

 この中でオオクニヌシは「天(あめ)の下つくりましし大神オホナモチ」と、天下統一をした神を意味する称号を与えられている。

 日本初の”天下人”だったオオクニヌシの道のりは、後世の天下人である織田信長豊臣秀吉徳川家康らと同様、苦難の道であった。

 オオクニヌシにはたくさんの兄弟神がいた。その数、八十柱と『古事記』は伝える。
 「八十」は実数ではなく「非常に多い」ことを意味する場合が多いが、弥生時代の出雲にもたくさんの独立した勢力があった。この兄弟神はオオクニヌシが戦わねばならなかったクニたちをあらわしている。
 『出雲国風土記』は神社数を399と明記しているが、この数は奇しくも1984年に荒神谷遺跡(島根県斐川町)で発見された計358本の銅剣、6個の銅鐸、16本の銅矛の総数380にきわめて近い。

因幡の白兎】

 オオクニヌシと兄弟神は、因幡鳥取県東部)の美女ヤガミ姫に求婚するために旅立った。このとき、オオクニヌシだけが兄弟の間で差別されており、荷物持ちにさせられた。こののちもオオクニヌシVSそのほかの兄弟という構図が続くが、彼の実力を妬んだのか大勢で「いじめ」ていた。

 手ぶらで先を行く兄弟神は海辺の岬で、皮をはがされ赤い肌がむき出したになって倒れているウサギを見つけた。ウサギはワニ(サメのこと)をだまし対岸に渡ったために皮をはがされたのだ。

 神々は「海で塩水につかってから、風の当たる場所で休むといいぞ」とウソの忠告を与えた。少しでも苦しみを軽くしようとウサギはこの妄言を真に受けてしまう。

 悶絶しそうなウサギを、あとから大きな荷物を背負ってやってきたオオクニヌシが見つけ、真水で体を洗い、薬草を塗るよう正しく指示した。するとウサギは回復し、もとの白い毛が生えてきた。

 ウサギはお礼に「先にいった神々はヤガミ姫を手に入れることはできないでしょう。選ばれるのはあなたです」と予言をした。
 実際には予言ではなく、決定だった。このウサギは実は神であり、だれが姫の夫にふさわしいかを試す試験官の役割を持っていたのだ。

【壮絶すぐる男の嫉妬】

 かくしてヤガミ姫は兄弟神たちに対して「私はあなたたちとは結婚しません。私にふさわしいのはオオクニヌシ様です」と一蹴。屈辱を受けた兄弟神は引き返すと、遅れてやってきたオオクニヌシをヤガミ姫に会わせないように山へと拉致した。

 そして、「この山には真っ赤なイノシシがいる。俺たちが山の上からイノシシを追うから、お前は下で受け止めるんだ」と命じた。
 兄弟神はイノシシに似た巨石を用意すると、それをカンカンに熱して灼熱で真っ赤にすると、オオクニヌシめがけて突き落とした。焼けた石はオオクニヌシを直撃、その命を奪った。

 しかし、オオクニヌシは母の祈りで蘇生。だが、兄弟神はすかさず生き返ったオオクニヌシを木の間にはさんで殺してしまう。そしてまた母の祈りで再び、命を取り戻すということを繰り返した。

 あまりに兄弟神の嫉妬が激しいため、オオクニヌシは木の国へと脱出する。木の国とは、古墳時代までは「木国」とよばれていた近畿地方紀伊国和歌山県)との説が有力だ。
 だが、この神話がなんらかの史実を反映しているという前提で考えれば、出雲と紀伊ではあまりに離れすぎている。

【出雲と吉備の関係?】

 出雲の近辺で「木の国」の候補をあげれば、音の近い瀬戸内海側の吉備(岡山県)があげられる。
 文献上に証拠は見あたらないが、中国山地は標高が低いので、南北の往来は比較的楽だ。
 さらに弥生時代後期、出雲と吉備の一部で土器の様式などが共通していたことも考古学の成果でわかっている。山陰と山陽で人の行き来があったことは間違いなく、同盟関係が結ばれていた可能性も十分にある。

 木の国の神、オオヤヒコにかくまわれたオオクニヌシだが、兄弟神はさらに追いかけてきた。オオヤヒコはオオクニヌシを巨木の洞に隠した。

【義父となったスサノオ

 実はこの洞は、黄泉の国と並ぶ異界「根の堅洲の国(根の国)」につながるトンネルだった。根の国が時空を超えた異界であった。なにしろ、ここを支配しているのが、6代前の先祖であるスサノオだったのだ。

 オオクニヌシスサノオの娘、スセリ姫と結ばれる。
 だが、舅(しゅうと)となったスサノオは婿と認めず、蛇の部屋に押し込めたり、草原に置いて周りから火を付けたりと、かつてアマテラスを難儀させたことを思い出させる暴れぶりで、何度もオオクニヌシを窮地に追い込んだ。
 
 スセリ姫の助けで危機をなんとか乗り越えたオオクニヌシは、寝ているスサノオの髪を建物の柱に縛り付けた。そして、スサノオの三種の神宝、太刀と弓と琴を奪うと、妻を背負い根の国を脱出した。スサノオは追うのをあきらめ、「その太刀と弓で兄弟たちを倒し、葦原中つ国(地上世界)を統治せよ」と、ようやく婿にエールを送った。

 地上に戻ったオオクニヌシスサノオの武器で次々と兄弟を倒した。こうして、地上世界ははじめてひとりの神によって統一されたのだった。

【神話と歴史の境界に】

 考古学的には、弥生時代の各地の有力な勢力はせいぜい今の県か市レベルの支配域しかもっていなかった。だが出雲だけは例外で、3〜4世紀にあらわれてくるヤマト王権よりもはるかに早い1〜2世紀ごろ、富山県を東端とする日本海沿岸のかなり広範囲に、ヒトデのような形をした「四隅突出型墳丘墓」という出雲文化が広がっていた。

 実際、オオクニヌシが結婚した女性の出身地を見ると、西は玄界灘の孤島・沖ノ島(福岡県)の宗像大社沖津宮にまつられるタキリ姫、東は新潟県のヌナカワ姫までと、考古学上で確認される出雲の勢力圏とかなり重なっている。

 「日本海側だけでは到底、天下を統一したとはいえない」と、弥生時代の出雲を軽く見る人もいるかもしれない。しかし、ヤマト以前の日本で、これほど広範囲に独自の墓文化を広めたケースはなかったのだ。

 ヤマト王権は、前方後円墳という共通の形をした墓を広めることで全国支配を行った。このことから「前方後円墳国家」とよぶ研究者もいるくらいだ。
 その先駆者である出雲、つまりオオクニヌシが『古事記』や『出雲国風土記』で「はじめて国をつくった神」と紹介されたのは、こうした偉業があったからといえよう。

オオクニヌシの項目おわり) 

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