歴史ニュースウォーカー

歴史作家の恵美嘉樹が歴史のニュースや本の世界を歩く記録です

これができたらベストセラー間違いなし!?

勝間和代さんが「2007年最高の原著」と紹介したことで、発売当初から爆発的な人気となった「表現本」です。
アメリカで150万部も売れたそうですが、邦訳のタイトルはいまいちです。
ハース兄弟『アイデアのちから』(日経BP、1600円+税)。

アイデアのちから

アイデアのちから

とにかく勝間効果もあってでしょう、なにしろアマゾンでは入荷3週間待ち!

行きつけの書店を探したところ1冊だけありました。担当さんと話をすると、「初刷りが少なかったようで3冊しかこなかった。追加をすぐ出したけど、入荷未定といわれて」とのことなので、奪い取るように(笑)買いました。
なるほど、アイデア勝負+表現勝負の我々にとってかなり有益なことが書かれているようでした。
原則が6つあって、その頭を並べると「SUCCESS]
1,単純明快(SIMPLE)
2,意外性がある(UNEXPECTED)
3,具体的である(CONCRETE)
4,信頼性がある(CREDIBLE)
5,感情に訴える(EMOTIONAL)
6,物語性(STORY)
はっきり言ってできすぎです(笑)
恵美嘉樹著作2冊をケースに自己分析してみると、
全国「一の宮」徹底ガイド (PHP文庫)

2、意外性がある(ほとんど知られていなかった一の宮巡礼)
4,感情に訴える(神社の御利益が期待できる)
6,物語性(神社とその神様にまつわる物語)
の3点が当てはまるかなと思いました。

一方、
図説 最新日本古代史は、
1、単純明快(1テーマを図やイラストで最大4ページほどで完結)
2、意外性がある(謎を提示してそれを解いていく)
3、具体的である(本書によれば専門的抽象度の高い話ではなく一般レベルで理解できる内容)
4、信頼性がある(恵美の私説ではなくベースは学術上の研究成果を反映)
の4点をカバーしていると思いました。

もっとも、こうした点を意識しながら書いていたのではないので、本書を読んで、より内容が伝わる文章を心がけていこうと決心しました。

著者だけでなく、コミュニケーションが重要な職業の人には必読です。ただし、入手困難です。

6つの法則のなかで、特に2番目の「意外性がある」が「意外」な内容で面白かったです。
というのも、本書でいう意外性という意味が「驚かせる」や「予想外」というレベルにとどまらない点です。
たぶん引用だけでは分からないと思いますが、キーワードは「隙間」です。

年に四八回もある歴史の授業に、生徒をクギづけにするにはどうすればいいか? 相手の知識に意図的に「隙間」をあけるといい。その隙間を埋めていけば、好奇心を長くつなぎとめることができる。

くしくも歴史が「つまらない」ものとして紹介されていますw

 この興味の「隙間理論」こそ、いくつかの分野が熱烈な興味を掻き立てる理由だろう。

 隙間理論は、ある重要なことを示唆している。つまり、隙間を埋める前には、隙間をつくる必要がある、ということだ。私たちはついたくさんの事実を告げたくなる。だがその前にまず、その事実の必要性を相手に認識させる必要がある。

↑どきりです。知れば知るほど、全部言いたくなってしまうんですよね。

また、下のように隙間理論を展開させれば、歴史に関心のない人にも興味を持たせることができ、恵美の著書も100万部も夢ではないようです(笑)

文脈を設定し、十分な背景情報を与えれば、視聴者は知識の隙間が気になる。

「あなたは、これだけのことを知っています。でも、これは知らないでしょう」というふうに。文脈を設定すれば、相手は次に何が起きるか気になる。

執筆する上で非常に重要で参考にあるテクニックも紹介されています。

「意外なことに気づいた。優れた文章は、すべて謎かけで始まっている。つじつまの合わない問題状況を書いた上で、読者を謎解きの世界に誘って、物語を展開している」
(略)
 謎には威力があると、チャルディーニは言う。結末を知りたいという欲求を産み出すからだ。(略)
 書き手の天文学者は、謎を生み出すことによって、塵に興味をもたせた。しかも、すぐに結論を明かすのではなく、科学理論や実験の説明が詰め込まれた二〇ページの文章を読むあいだ、ずっと関心をつなぎとめた。

マッキーに言わせると優れた脚本はすべてのシーンが「ターニングポイント」だ。

これからの執筆にぜひ活かしていこうと思います。