歴史ニュースウォーカー

歴史作家の恵美嘉樹が歴史のニュースや本の世界を歩く記録です

ひとときの連載「パノラマ日本史」28回で完結!

お久しぶりです。

恵美嘉樹です。

はてなダイアリーをしばらく放置していましたが、このたびはてなブログへ移行してみました。

簡単ですね。ぽちっと押すだけです。

ただ、はてブの移行はしばらく待ってみようと思います。

さて、東海道新幹線グリーン車にのるともらえる雑誌「ひととき」(ふつうに購入もできます。税込み500円です)で2年半ちかく連載させていただいた「パノラマ日本史」ですが、2016年12月号をもって連載終了となりました。

長い間、ありがとうございました。

さて、最後のテーマは、長野県茅野市の「縄文のビーナス」です。

イントロです

「国宝の土偶『縄文のヴィーナス』が発見された長野県の八ヶ岳西南麓は、縄文時代中期に、日本で最も人口が集中していた地域といわれる。この縄文王国が栄えた理由は、地形にあったーー。」

 

そして

最後の一文は

「日本の多様性に満ちた地形や自然環境は、はるか昔から恵みとともに時に大きな試練を与え続けてきた。しかし、それでもなおわたしたちはこの自然と共に生きていくのだ。」

です。

縄文人が優品であるヴィーナスを見て、「おれも家に帰って作ろう」と少し離れた村に帰って、つくってみたけど、へたくそな劣化コピペ土偶が出土している話など、今のわたしたち(Denaで働く人達も)にも響くエピソードを紹介しています。ぜひ、新幹線に乗ったら、グリーン車とはいいませんから、キオスクで買ってくださいませ。

 

さて、この連載は、担当編集さまの地理と歴史がミックスしたらおもしろいのではないかという熱い思いで始まり、その後、ブラタモ人気により、この切り口の正しさは証明されたと思います。

 歴史+地理のブームの中で、ではなぜ最終回なのか。

前にも「ひととき」で長期連載させていただいた古代史紀行「アキツシマの夢」も一時、連載終了後に充電期間をおきつつ、「パノラマ日本史」を始めさせていただきました。

 

みんな大好きブラタモさまが、地理と地図を組み合わせたわれわれの連載「パノラマ日本史」のコンセプトをあっという間に抜き去ったという事実は甘んじて受けないといけないと思います。

なので一度、ここは箸を置き、台所にまわって、あらたな企画を仕込んでおります。

 

また、さらにおもしろく、読者のみなさんを「歴史旅」に誘う連載をはじめたいと思っておりますので、そのおりはよろしくお願いします。

 

ひととき2016年11月号の「日本史パノラマ」27回は井伊直虎について書きました

東海道新幹線のグリーン車の車内雑誌「ひととき」で連載している「日本史パノラマ」

2016年11月号(10月20日刊行)では、17年の大河ドラマ井伊直虎について「尼僧の領主、直虎」として書きました。

 

門田隆将著『「吉田調書」を読み解く 朝日誤報事件と現場の真実』を読む

<あれほどの大キャンペーン記事を、たった一人の1Fの現場の人間を掴まえることもしないまま”GO”することができる新聞。すなわち、自分たちの主張したい記事を書くためなら、「事実」などどうでもいいと考えていることを示している。>(94頁)

この一文が、朝日新聞のダブル吉田誤報問題の真相といえるだろう。

特に福島原発の「所員が逃げた」の誤報について、いち早く疑義を唱えたジャーナリストの門田隆将氏が今回の一連の「事件」をまとめた『「吉田調書」を読み解く 朝日誤報事件と現場の真実』(PHP、1300円)が11月13日に刊行された。

筆者(恵美)は、門田氏が吉田所長にインタビューした『死の淵を見た男』(PHP)を読んでいたため、朝日の「逃げた」報道について、自分のブログでおかしいと声をあげたが、まさかこんな展開になるとは想像もしていなかった。

3月15日の福島第一原発 吉田所長の退避指示を巡る朝日新聞と門田隆将本の大きな違い - 歴史ニュースウォーカー

今回の一連の「事件」の背景になにがあったのか。また、一人のジャーナリストにすぎない門田氏に対して「ジャーナリスト宣言」をかつてしたことのある朝日が組織をあげて法的措置をちらつかせた暗闘など、すさまじい舞台裏がかかれている。(もちろん門田氏視線で)

また、公開された「吉田調書」は内閣府のサイトでPDFで公開されているが、数日間にわたる調書なので何百頁の長さで、とても隅から隅まで読み切れない。(技術的な話が多く、該当の部分を探すのが大変だった)
本書では、調書も分かりやすく、ダイジェストに読み解いており分かりやすい。

「おわりに」で、門田氏は「世の中には、反原発原発推進など、さまざまな立場の人がいる。しかし、本書は、それら一定の主張を持った人々とは一線を画すものである。物事に「絶対」はないように、特定の主張や立場からしか物事を捉えようとしない人々には本書の内容は、相いれないだろう」と書く。しかし、本書は原発推進派の人にとっては、原発をコントロールすることの難しさと人材育成の重要性(およびその困難さ)が分かるだろうし、反原発の人にとっても、朝日新聞のごく一部(だろう)の記者たちによって長くゆがめられてきた原発報道に基づく運動を修正するよい機会になるのではないだろうか。

目次

1章 朝日新聞の「吉田調書」報道
2章 謝罪会見
3章 全電源喪失
4章 ベントの死闘
5章 海水注入をめぐる攻防
6章 部下たちへの感動
7章 東日本壊滅の真実
8章 「全員撤退」問題の決着
9章 現場は何と闘ったのか
10章 津波対策と新聞報道
11章 吉田調書が残した教訓

「吉田調書」を読み解く 朝日誤報事件と現場の真実

「吉田調書」を読み解く 朝日誤報事件と現場の真実

死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日

死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日

朝日新聞が吉田調書、吉田証言ともに誤報を認め謝罪

9月11日の朝日新聞社長の事実上の辞任会見で、この数か月の怒濤の動きは一つの山場を迎えたでしょう。

感慨深いのは、吉田調書です。

朝日新聞が5月20日に「吉田所長の命令違反で所員逃げ出した」との報道に対して、その日のうちに
3月15日の福島第一原発 吉田所長の退避指示を巡る朝日新聞と門田隆将本の大きな違い - 歴史ニュースウォーカー
というエントリーを書きました。

その時はもちろん、「朝日のスクープすげー」「新聞協会賞だ」とネットなどでも絶賛の嵐の中での小さな反旗でした。

上のエントリーで追記、追記を重ねているように、
6月になって、吉田所長に生前唯一報道機関やジャーナリストでインタビューをした門田隆将氏が反論のエントリーをブログで発表。
それをうけて週刊誌などが一斉に疑問視する報道を始める。
なんと朝日新聞は疑問の声に対して損害賠償をちらつかせて抗議文を乱発しました。
8月はじめに、直接は関係ないですが、いわゆる従軍慰安婦問題で「吉田証言」記事を撤回
しかし謝罪せずで、炎上。
8月中旬に
まず産経新聞が口火をきり、吉田調書を入手。これを受けて政府が近い将来の吉田調書公開を約束すると、NHK、読売新聞、共同通信(毎日も掲載)が、独自に入手して、次々に朝日誤報を指摘し、四面楚歌となりました。

そしてきのうとうとう政府が吉田調書をネットで公表したところ、(まさかネットで全文公開と思っていなかったのかもしれません)あわてて、誤報を認める謝罪会見を開きました。

これを機に、ちゃんとした新聞に生まれ変わることを期待します。

吉田調書を読む

ハフィントンポストが公開している調書で、
朝日誤報や「我々のイメージは東日本壊滅ですよ」など核心部分のPDF
http://big.assets.huffingtonpost.com/077_1_4_koukai.pdf

菅直人らを批判するシーンが入っているPDFはこちら
http://big.assets.huffingtonpost.com/077_2_koukai.pdf
何日、何時間も聴取をして、質問者と信頼関係ができて、さらに長時間の聴取のつかれもあって、べらんめいちょうで本音を話している様子がうかがえる。
初日(7・22)の質問のときは、菅直人に対して敬語をつかっている。
http://big.assets.huffingtonpost.com/020_koukai.pdf

12日に1号機が水素爆発して一時40人不明「私そのとき死のうと思いました」発言→その後、みんな現場にいこうとして感動する
http://big.assets.huffingtonpost.com/051_koukai.pdf

6冊目となる単著「日本古代史紀行 アキツシマの夢」9月15日発売

東海道新幹線グリーン車の機内誌(車内誌)「ひととき」で4年にわたり連載させていただいた「アキツシマの夢」が単行本になります。

時系列をそろえて、一部書き下ろしの項目もあります。
秋の旅のシーズン、ぜひ本書を手に日本各地を旅して、古代人の息と古代日本の風邪を感じていただければ幸いです。

アマゾンで予約受け付け中です。

日本古代史紀行 アキツシマの夢

日本古代史紀行 アキツシマの夢

http://www.amazon.co.jp/dp/4863101295/

息子の墓を見下ろすから蘇我稲目の墓ってないわ〜

 お盆直前に突如発表された明日香村の稲目の墓。
 もやもやしたけど、やっぱりないわ〜って感じなのでメモしておく。こんな文献ゼロで、個人の墓と特定って考古学界それでいいのでしょうかね?
 古墳にこーふんする人なら、「ほかに例のない石段の古墳」というのも、うっそ〜?あるでしょってツッコミたくなりませんか?
 4段分しか出ていないのに、「8段」まであってピラミッド型になるとか。うーん。
 マニアの多い中世・近世の城郭なら総ツッコミが入るニュースですが、絶賛の嵐ばかりで、古墳・古代史マニアはやっぱり桁違いに少ないのだろうかと想像しています。

 奈良県明日香村にある飛鳥時代初期(6世紀後半)の都塚(みやこづか)古墳が、一辺40メートル以上の巨大な方墳で、国内に例がない階段ピラミッド状と判明し13日、関西大と村教委が発表した。現場は蘇我氏の拠点地域で、古代朝廷の実力者・蘇我馬子の墓とされる石舞台古墳に近いことなどから、専門家は「馬子の父で、蘇我氏の権勢の基礎を築いた蘇我稲目の墓の可能性が極めて高い」としている。(産経

産経では、「高句麗の王陵「将軍塚古墳」(4〜5世紀、高さ約13メートル)は階段ピラミッド状で、百済の古墳にも似た形があることから、古代朝鮮がルーツとの見方もある。」とするように、石をつかってピラミッド型につくる古墳は渡来系の影響を受けたものとして、この時代に割りとあって、「初」なんてものではないです。

古墳にこーふんする人ならぱっと思うのは岡山県真庭市の大谷1号墳でしょう。

真庭観光協会HPから

あしもとの奈良県内にも有名な石のカラト古墳(木津川市奈良市)があるじゃないですか。

木津川市観光協会HPより


そうそう、お墓じゃないですが奈良時代にお坊さんの行基がたてた土塔(大阪府)なんてのもありますね。

畿内国倭御魂ブログさんより

しかし、専門家のみなさんはそういう類例を知らないのか(知らないはずはない)

白石太一郎・大阪府立近つ飛鳥博物館館長(考古学)は「こんな特殊な構造の方墳は国内で見たことがない。蘇我一族の有力者の墓だろう」と話す。(朝日

特異な墳丘について、木下正史・東京学芸大名誉教授(考古学)は「類例がなく、日本の系譜では浮いてしまう」と首をひねる。(読売)

まじかよ〜

飛鳥の谷は王都と言われていますが、もともとは考古学的にも渡来人たちが入植した土地に、あとから大王家が「ここいいところやな」と都を置いた場所とみられていたはず。
そうした見地(下にそう主張されている人のコメント見つけました)を踏まえれば、この墓はまずその渡来系集団の長の墓というところから始めるべきじゃないでしょうか。

すべてすっとばして、いきなり、息子の馬子や天皇たちの陵墓と違って、文献(日本書紀など)に場所の記載が一切ない稲目を出してくるという。しかも、村と関西大学が発表したとなっているのに、村が「稲目の墓でしょう」という発表ではなく、関西大の人でもなく、専門家とする人たち(名のある人たちですが)がいっせいに「稲目」「稲目」といって、それが新聞の大きな見出しになっちゃうという、いったいなにがどうなっているんでしょう?

この日、西光慎治・村教委調整員と米田文孝・関西大教授(日本・南アジア考古学)が村内で記者会見して説明した。米田教授は「世界遺産登録を目指す『飛鳥・藤原の宮都とその関連資産群』にとって追い風になる」と話した。(読売

おっと、ちゃんと異論を言っている専門家もこっそりいっらしゃいましたね、ゼロではなかったです。

小沢毅・三重大教授(考古学)は「石舞台古墳周辺が蘇我氏の領域になるのは馬子の頃。稲目の時代は飛鳥のもっと北や西だった」と指摘。稲目が朝鮮半島の女性をめとって住ませた「軽の曲殿まがりどの」とされる地域のすぐ南側に位置する橿原市の五条野丸山古墳を稲目の墓と主張する。(読売)