東京にはなぜ川がないのか。リアル「千と千尋の神隠し」ごっこをしてみた本『東京「暗渠」散歩』
東京って川がないですよね。
北の荒川、南の多摩川という大河川に挟まれた「東京」には
神田川、玉川上水、石神井川など数えるほどの川しか「見えない」。
でも、関東平野というくらいですから、本来はたくさんの中小河川が本来はあったのです。
それらの川は、都市化によって、川に「ふた」をする暗渠(あんきょ)となってしまい、今の私たちの目に触れることがなくなっているのです。
この川の「亡骸」である暗渠を散歩しようというのがこの本です。
本田創編著『東京「暗渠」散歩』(洋泉社、2400円)
- 作者: 本田創
- 出版社/メーカー: 洋泉社
- 発売日: 2012/11/21
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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失われた水の流れを幻視しながらときには自らが水となり川となってかつてそこに流れていた川をたどってみよう。
失われた風景を自らの心の内に復元し、川とともに蓋をされてしまった土地の記憶を掬い上げていこう。
たとえ水がなくなっても誰かがそこに川があったことを覚えているかぎりそこに記憶としの川は流れ続けるだろう。
「千と千尋の神隠し」で埋め立てられた川の化身「ハク」が千尋の記憶によって「琥珀川」との名前を取り戻したように。
こんな感じで盛り上げていきます。(12P)
パラパラみると、オールカラーで、3Dマップもあって、値段のわりに豪華仕様で、出版社の気合(著者の印税を下げたんだろうなぁ、とか笑)を感じます。
でも、でも、惜しいのです。実に。。。
肝心の本文ですが、どうしても網羅的、説明的になってしまい、「すごいなぁ」「よく全部歩いたなあ」と感心はするのですが、通読してみてひとつの世界観(『アースダイバー』のように)が浮かぶような感じにはならないのです。
編著なのでしかたないところでしょうが、個人的には、桃園川などを担当した吉村生さんの文章が、歴史と現在の縦糸、横糸を上手であり、かつ軽妙で読みやすく、面白かったです。
この人の単著にして、もっと薄ければ、結構ヒットしたんじゃないかなぁとか思いました。(まあ、まだ出たばかりなのでヒットするかもしれませんが)
暗渠さんぽ(吉村さんのブログ)
http://kaeru.moe-nifty.com/
それぞれの書き手のみなさんは、実際に歩いたわけですから、すべての暗渠に思い入れと現地情報がたくさんあるわけです。それをいかに思い切って「捨てる」かが、読み手に伝わるかの勝負どころだと思います。
(私たちのデビュー本『全国「一の宮」徹底ガイド』(PHP文庫)のときも、一番、戦略的に意識したのがその部分でした)。でも、知れば知るほど、「捨てる」のは難しいんですよねぇ。
- 作者: 恵美嘉樹
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2007/10
- メディア: 文庫
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