歴史ニュースウォーカー

歴史作家の恵美嘉樹が歴史のニュースや本の世界を歩く記録です

ツキノワグマの子殺しと仮面イクメン

1月15日(日)夜のNHKスペシャル | 森の王者 ツキノワグマ~母と子の知られざる物語~を見ました。

なんとなく見てたのですが、途中で残酷な自然の「性」を目の当たりにして、希望そして絶望を味わいました。

 

オスの“子殺し”という研究者さえ知らなかった驚きの生態まで記録されている。

というエピソードです。

 

 クマの雄はメスと交尾したいがために、メスが育てている幼いコグマをころすのです。

 もうビックリしました。

 必死に止めようとして自分より大きなカラダの雄に立ち向かうメスの次郎(なぜか名前が次郎)

 しかし、そのかいなく、無残にも雄に命をたたれる2匹のコグマ。

 そのあと、オスは次郎と交尾するのです。

 次郎は母としての悲しさでもちろんうなだれるのですが、ここからが切ない。生物として生殖、繁殖という定められたスイッチに従って子がなくなることで、この我が子をころしたオスと交尾するためにその性のはけ口を受け入れるのです。生き物としての悲しさ、やるせなさったらありません。

 しかし、そんな悲しみをのりこえて、翌年の春、次郎は2匹のコグマとともに春を迎えるのです。いやー感動しました。直後に落石があたって子グマが転落したけど、無事だったときには涙出そうになりました。

 しかししかし、そんな希望と感動も一瞬で奪い去られます。

 なんということでしょうか、次郎は2年続けて、別のオスに我が子を2匹ともまたも奪われるのです。

 うなだれた次郎。そこにオスが近づいてきます。交尾を求める仕草をするオス。マタギじゃなくても、火縄銃もって今から群馬にいってうちころしたいという思いに駆り立てられましたよ。

 次郎はまた立ち上がります。オスの求めに応じて森の中へと入っていくのです。カラダがもうクマというよりもたぬきくらい小さくなったようになりながら。。。

 この精神的なショックで次郎は死んでしまうのではないか、クマを追い続けてきた動物カメラマンさんは心配します。カメラマンと視聴者の願い虚しく、2016年の冬眠まで次郎の行方は結局わからなくないまま冬をむかえました。

 人間ならみずから命をたつのではないかと思ってしまうほど、悲惨な結末で番組は終わりましたが、2017年春に、それでもしぶとく生命の強さを次郎が見せてくれるのか、わずかな希望を抱くことしかわたしはできませんでした。

映画「セブン」なみの後味の悪さ。ノンフィクションだからなおさらです。

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 たまたま、その後、読んだブログが下の記事でした。

www.stellacafe7.com

 

 よくある(と言ったら失礼ですね、すみません)育児と父親のダメンズぶりを紹介する内容なのですが、ふつうなら「あるある」と笑ってすませるところですが、

 あの番組をみたあとだったので、ブログに書かれていた以下のような「江戸しぐさ」ならぬ「父親しぐさ」。

第9位子どもみたいに構って欲しがる

第7位 「子供泣いてるよ?」「部屋が汚いね」など他人事なセリフ

第1位 子どもの世話よりもスマホゲームに夢中

 こういったことが多くの父親というものにつきまとうのか、かねてから疑問だったのですが、「もしかしてDNA的な、クマ的な、もうどうしようもないくらい原始的な性(さが)なの?」と思ってしまいました。

 根拠はないですよ。感じただけです。

 ただ、いろいろ思い浮かぶのです。

 何年か前に、自衛隊で単身赴任中の父親が、家に帰ったら家族がいまいち相手にしてくれなくて、なんと家を放火。家族全員をしなせるという事件がありましたよね。

 帰るときに妻が見送りをしなかったから、が理由と報じられました。

杵築市放火殺人事件 - Enpedia

 そして、最近では某カリスママンガ編集者容疑者のお話。本人が容疑を否定しているそうなので容疑についてはわかりませんが、

www.zakzak.co.jp

 

 3人目の子供の誕生をきっかけに育児休暇を取った。2012年7月の朝日新聞のコラムでその頃を振り返り、こう記している。

 「その感想は、『主婦ってこんなに大変なの!?』の一言。やってもやっても仕事が途切れない(中略)それでいて誰にも評価されない、誰からも褒められない。子どもたちに始終、囲まれているはずなのに孤独感が心を覆う。会社に行く方が、ずっと楽だと思いました」

 

 と、育休をとったとしながら、

実は

 

 「周囲はみな、(朴容疑者を)良い父親だと思っているが、そんなことない。育休を取っても子育てに参加してくれない」

 捜査関係者によると、妻の佳菜子さんは事件前、文京区の子ども家庭支援センターに「夫に子育てをめぐって暴力を振るわれている」と相談していたという。佳菜子さんはさらに「育児と仕事を両立できないなら、仕事を辞めろといわれた」「夫は『女は家庭にいるのが幸せ』だと思っている」などと漏らしていたという。

 

 

 という仮面「育休」だったという報道もありました。

www.sankei.com

 考えてもみなかったことですが、こうやって育休を取りながら、家ではゴロゴロして、奥さんに家事を任せっぱなしという自称「イクメン」が日本にはそれなりの数が存在するのではないかと、思いぞっとしたのです。

 「わたし、妻や子のために育休とりました。本当に母親って大変ですね。やって初めて大変さがわかりました」キラーン

 という人当たりのいいパパの中に、ツキノワグマなオス性が顔をもたげていたらホラーだなぁと思った次第です。

 世の父親さまにおかれましては、自分の中に野生があることを認識つつ、人間としての知性と理性で、真のイクメンとなり、日本を子どもたちにとってもよい社会にしていこうではありませんか。

【追記】そして今朝にはこんなニュースも。この男の顔がツキノワグマにしかみえません。