知っておきたい東北「5戦5敗」の歴史と常識を覆す蝦夷、政宗、白虎隊の真実
あすは東日本大震災から2周年。進まぬ復興、進む甚大な税金投入…。これからは、被災者VS外の人、被災者内部同士とドンドンすれ違いがでてくることでしょう。典型的なのが、陸前高田の奇跡の一本松を巡ることです。(恵美嘉樹の見方はWEB連載「奇跡の一本松はなにを背負う」(ハザード今昔物語)@ハザードラボ)
現在の問題で、どうにもならなくなった時に役立つのは「歴史」です。この本岡本公樹『東北 不屈の歴史をひもとく』(講談社)は、縄文時代から幕末の戊辰戦争までの東北の通史を、最近の考古学や歴史研究の成果をもとに浮かび上がらせます。
恵美嘉樹(二人とも)ファンの仙台在住の作家、伊坂幸太郎氏が帯に推薦文を寄せています。
この本が静かに教えてくれる歴史的事実の数々からは、「負けても負けても、何かが生まれる」というメッセージを感じずにはいられず、大勢の者たちに背中を押されるような、心強さを覚えた。 大事な本だ。
この本で上げるのは、
5戦5敗とはなんのことでしょうか?
赤坂憲雄さんらがあげる東北への歴史観です。東北学 忘れられた東北 (講談社学術文庫)
- 平泉の藤原氏と鎌倉軍の「奥州戦争」
たしかに5回やって5回負けている。。。
ただ、筆者は
東北は、圧倒的な力の前に倒れても、そのたびに、6度も立ち上がってきたのだ。
業火のなかから不死鳥は蘇る。
今回は7度目の蘇りだ。かならず東北は立ち上がることができる。その証拠を歴史で示すのが本書のいちばんの目的だ
とします。
たしかに日本列島で中央に反乱したケースはいくつもありますが、1000年の長きにわたり、これほどたびたび立ち上がったケースはないわけです。
5連敗の「弱小」とみるか、「5回も強者に立ち向かった真のつわもの」とみるか。
常識(イメージ)を覆す東北の歴史〜蝦夷は狩猟採取民族ではなかった
蝦夷(えみし)というとどんなイメージを持つでしょうか。
同じ字をあてる北海道「蝦夷(えぞ)」のように縄文文化を引き継ぐ狩猟採集民族と思いがちですが、全然違う。
特に坂上田村麻呂ら政府軍と戦った人たちは、
農耕民であり、かつてはヤマト王権の「民」
でした。
ところが気象の変化やら朝廷のゴタゴタやらなんやらで、東北と中央との関係が100年ほど途絶えてしまったのです。
その後、しばらくしてまた東北に中央の人たちがやってきました。
東北の人たちは
「おお!久しぶり! また交易やって、WIN-WIN関係結ぼうや」
ところが中央の人
「あいつら野蛮人。未開人。われら文明人が管理すべし」
そりゃあ、怒りますね。で、三十八年戦争という日本史上最長の戦争が起きたのでした。
自然にもてあそばれながら、災害を利用した東北の人たち
東北は、「1000年に一度」の津波をはじめ、日本史上最悪の噴火である十和田大噴火など、厳しい自然と共生してきました。
本書ででてくる面白い話しは
1) 青森の縄文の三内丸山遺跡は、十和田湖の大噴火によって原生林が一度死滅したことで、はじめて大きな「集落」を切り開ける大平原を手にした
2) 1000年前の貞観津波で大ダメージを受けた東北ですが、その後の復興需要により、「じつは、古代都市としての多賀城は9世紀が最も整備された時期」だった。
3) その後には十和田火山が史上最悪規模で大噴火。地震のときには支援した政府も、今回は、これまで蝦夷に門外不出だった鉄の作り方を教えて「あとはよろしく」と放り出した。その結果、生まれたのが前九年後三年の勢力。。。などなど
やんちゃすぎる独眼竜政宗
江戸時代になって次々に外様大名をつぶす幕府。その担当となった「鬼の東京地検特捜検事」が柳生宗矩。
ところが、伊達政宗は柳生と大の親友。飲みトモダチ。
政「おう、ムネちゃん。この酒うまいな」
柳「まさちゃん、わかる? うちの故郷、大和の酒だよ」
政「これ仙台でも造りたいな。ムネちゃん紹介してくんない」
柳「もちろん。(しめしめ、これで伊達家に堂々とスパイを送り込める」かんぱーい」
柳「どうだった? 仙台城を監視できそうか」
造り酒屋「そ、それが・・・」
柳「むっ。。。やはり郊外にでも押し込まれたのか?」
酒屋「いえ、まったく逆でして。仙台城の大手門の目の前に酒蔵を設置してくれたのです」
柳「なに?! 出入りが丸見えではないか」
酒屋「はあ、なんでも見てくれと」
まあ、こんな感じで、政宗は「コネを使う」とか小さいことではなく、幕府の想定斜め上を行く対応で、取りつぶしをまぬがれたのでした。
白虎隊、飯盛山で死んでいなかった
これは「都合の悪い真実」ですね。
大河ドラマでも、ぜったい飯盛山で19人みんな自刃しますよね。(20人でそのうち1人飯沼貞吉だけが生き残った)
ところが近年、次々に出てきた生き残った白虎隊士の日記や戦後直後の記録などから、
19人中、飯盛山で自刃したのは、6人だけ!
でした。
ほかの戦場で戦死した人なども、物語上「全員、飯盛山で自刃」にされてしまったのです。
なかには別の場所に戦死して、一族の墓石にもそう書かれていたのに、その後、都合が悪くなったのでしょう、名前を削られてしまった人も。。。カワイソソス
目次と小見出し(一部)は以下の通りです。
##第1章 刻まれた第一歩
##第2章 蝦夷VSヤマト
##第3章 貞観地震と火山噴火
##第4章 前九年・後三年の役
##第5章 黄金の平泉
- 源頼朝の「平泉亡命計画」
##第6章 武士たちの新天地
- 十三湊が滅んだ理由
- 伊達など次代の武士たちはいつ東北にやってきたのか
##第7章 独眼竜の時代
- 毒殺未遂の母、弟と芝居か
- 天守台のない仙台城
- 慶長の大津波
- 「地検特捜部」の柳生宗矩と親友に
- 酔いつぶれた晩年と見続けた天下
- 弘前藩主は石田三成の孫
- 会津に松平家が入るまで
- なぜ南部では一揆が多かったのか
##第8章 戊辰戦争