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2億年前の「日本」に巨大隕石が衝突、アンモナイトなど大絶滅か【クレーター画像あり】

 6500万年前の恐竜絶滅も隕石衝突が原因とほぼ確定していますが、2億1500万年前の生物大絶滅も巨大隕石の可能性がでてきました。しかも、その証拠が日本で見つかるとは。

 巨大隕石自体は、カナダにあって、そのクレーターは100キロだとか。そして地球の裏側の日本(当時は海底だった)にまでチリを降らしたのでした。

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2億5000万年前にも猛烈な暑さで生物が死に絶え、その後、ようやく復活したら、今度は隕石でドカン。宇宙は甘くないですね。

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=尾上さん

研究の概要

2億1500万年前の地層から巨大隕石衝突の証拠を発見
〜隕石衝突と生物絶滅の関連性の解明に期待〜

◎共同発表者の氏名(所属)
尾上哲治・佐藤峰南・根建心具(鹿児島大学
中村智樹(東北大学
野口高明(茨城大学
日高義浩・白井直樹・海老原充(首都大学東京
大澤崇人・初川雄一・藤暢輔・小泉光生・原田秀郎(日本原子力研究開発機構

◎研究成果のポイント
三畳紀後期(約2億1500万年前)の地層から巨大隕石衝突の証拠を発見.
・この隕石衝突によりカナダのマニクアガンクレーターが形成.
・隕石衝突による絶滅は海洋プランクトンにはみられない.しかし北米の動植物は絶滅の影響を受けた可能性が高い.
◎研究成果の概要
 鹿児島大学東北大学茨城大学首都大学東京日本原子力研究開発機構の研究グループは,岐阜県坂祝(さかほぎ)町の木曽川河床から採取された岩石試料について,ICP質量分析装置(注1)や多重ガンマ線検出装置(注2)等を用いた分析を行いました.その結果,今から約2億1500万年前の三畳紀後期(注3)という時代に巨大な隕石衝突が起こった証拠を発見しました.
 三畳紀後期にはいくつかの生物絶滅イベントが知られています.その原因のひとつとして隕石衝突が考えられてきましたが,これまで世界各国の研究者が20年以上にわたり隕石衝突の証拠を探してきたのにも関わらず,今まで不明でした.本研究は隕石衝突の明らかな証拠を世界で初めて見いだしました.本成果は11月5日(日本時間11月6日午前5:00以降)の週に米国科学アカデミー紀要(オンライン版)にて発表されます.

◎研究の背景
 三畳紀後期という時代には,幾度かの生物絶滅イベントが知られています.従来の研究では,恐竜の絶滅で有名な白亜紀/古第三紀境界の隕石衝突イベントのように,三畳紀後期の絶滅イベントもまた隕石衝突に関連性があるのではないかと考えられてきました.しかし,これまで隕石衝突により形成された地層であるイジェクタ層(注4)は,海底で堆積した化石を含む地層からみつかっていません.そのため隕石衝突と絶滅の関連性について議論することができませんでした.


◎研究の経緯・手法
 研究グループは,三畳紀後期の隕石衝突の証拠を探す目的で2009年4月に研究を始めました.研究対象は,岐阜県坂祝町木曽川河床にみられるチャート(注5)という岩石です.2010年には,チャートの間に挟まれた粘土層(図1)から,隕石衝突により形成されたと考えられる直径1 mm以下のスフェルール(図2)とよばれる球状粒子を発見しました.この粒子については,隕石衝突に由来する物質であるかどうかを確かめるために,放射光X線回折分析(注6)や,電子線マイクロアナライザ(注7)などの機器分析を行いました.さらに粘土層については,地球外物質の混入を調べる目的で,ICP質量分析装置や多重ガンマ線分析装置を用いて詳細な元素分析を行ないました.

◎研究の成果
 元素分析の結果から,地球表層には一般に極めて微量にしか存在しない白金族元素(注8)が,岐阜県坂祝町の粘土層中に異常に高い濃度で含まれることが明らかになりました(図3).これは地球上の火山活動などのプロセスでは説明できないほど過剰なものです.隕石との元素濃度の比較から,粘土層に含まれる白金族元素は巨大な隕石の衝突によりもたらされたものと結論づけられました.また粘土岩に含まれるスフェルールには,白亜紀/古第三紀境界からもみつかっている「ニッケルに富むマグネタイト」と呼ばれる鉱物が含まれていました.これも隕石衝突に起源をもつ粒子であると考えられます.
 チャートには,大きさ1mm以下の微小な化石(放散虫とコノドント)が含まれています.これらの微化石が示す年代から,この隕石衝突が今から約2億1500万年前の三畳紀後期に起こったことが明らかになりました.この時期に形成された巨大なクレーターとしてカナダケベック州マニクアガンクレーター(図4)が知られています.みつかったイジェクタ層はこのクレーター由来の堆積物と考えられます.

 また微化石の検討から,海洋プランクトンの多くの種が,この隕石衝突イベントを生き延びたことが明らかになりました.しかし同時期の北米の地層からは,アンモナイトや陸上の動植物の絶滅が認められます.これらは白亜紀/古第三紀境界とは質的に異なる絶滅パターンと考えられ、地球史における隕石衝突と生物の絶滅の多様性を示唆するものです.

◎今後の展開
 今回の研究では,三畳紀後期に起こった隕石衝突が北米の動植物の絶滅の原因となった可能性を示唆していますが,海洋プランクトンはその影響を受けず多くの種が生き延びたことを明らかにしました.そこで,今後はこの隕石衝突によりどのような生物が絶滅の影響を受けたのか(絶滅の選択性)について研究を行なう予定です.そのため,世界各地の三畳紀後期の地層から同様のイジェクタ層を探索します.そして,隕石衝突が地球環境に与えた影響(例えば寒冷化や酸性雨など)についても,地球化学的な視点から研究を発展させていく予定です

図1 隕石衝突が記録された粘土層の写真.岐阜県坂祝町木曽川右岸河床.

図3 岐阜県坂祝における白金族元素濃度の垂直変化.粘土層の下部に白金族元素が非常に高い濃度で含まれる.オスミウムルテニウム,白金の値はICP質量分析による.

図4 カナダケベック州マニクアガンクレーター衛星写真(提供NASA).クレーターの内部は人工のダム湖になっている.クレーターの直径は100 kmで,今から約2億1500万年前の隕石衝突により形成された.


WSJより 

 約2億1500万年前にアンモナイトなどが絶滅した原因とみられる巨大隕石(いんせき)衝突の証拠を、鹿児島大などの研究チームが5日までに発見した。隕石と絶滅の関係では、恐竜などを滅ぼした中生代白亜紀末(約6500万年前)の隕石衝突が有名だが、衝突の証拠を捉えたのは珍しいという。論文は米科学アカデミー紀要電子版に掲載される。

 古生代三畳紀後期(約2億〜2億3700万年前)には、アンモナイトなどの種が大規模に絶滅した。カナダ・ケベック州マニクアガンクレーターを作った直径数キロ規模の巨大隕石衝突が原因の一つとされるが、衝突の証拠が見つかっていなかった。

 鹿児島大の尾上哲治助教らの研究チームは、岐阜県坂祝町木曽川河床の地層を採取。鉱物などを詳しく調べた結果、地球の表層にほとんどなく、隕石に特有のイリジウムなど6種類の白金属元素を、通常の50〜2000倍の濃度で検出した。白亜紀末の地層で見られる特殊な鉱物も含まれており、衝突で巻き上がったちりが降り積もったと分かった。

 地層の上下には海洋プランクトン類の化石も含まれており、衝突時期を約2億1500万年前と特定。北米付近でアンモナイトや哺乳類型は虫類などの大規模絶滅が起きた時期に当たるという。 

時事通信社