NHKの歴史・考古学についてのニュースは、非常にいい加減であることが、ままあります。
それは根本には、「大河ドラマ」や「その時歴史は動いた」「歴史秘話」などの歴史エンターテイメント路線が、報道の分野にまで浸透しているからといえるでしょう。まあ、いいんですよ。歴史秘話ヒストリアなんて、ノンフィクション風時代劇です。
でも、ニュースまでそのノリでされるのは、いかがなものかと思います。
- 作者: 鈴木眞哉
- 出版社/メーカー: 洋泉社
- 発売日: 2012/05/10
- メディア: 新書
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一部紹介
要するに、早くから公にされていたもので、その中身まで近年の発見だと真面目にいっているなら驚くほど不勉強だということです。 102p
歴史の「れ」の字も知らないような方のご意見でも、ひとたびNHKの電波にのって広い範囲で流されてしまうと、けっこう信用されてしまう。それが恐ろしいということなのです。 69p
きょうこんなニュースをNHKが全国枠でしていたので、見た人も多いのではないでしょうか。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20121025/k10015996761000.html
奈良県天理市の「ノムギ古墳」は、西日本では珍しい四角形を組み合わせた「前方後方墳」で、3世紀後半に築かれた可能性が高いことが分かりました。
「ノムギ古墳」は、ヤマト王権の中心地とされる天理市と桜井市にまたがる「大和古墳群」にある古墳の1つで、東西方向に63メートルにわたって延びています。
天理市の教育委員会が古墳の南側で発掘調査を行ったところ、ほぼ中心の部分で南北方向に12メートルにわたって、直径20センチほどの石が並んでいるのが見つかったということです。
さらに、これらの石は北の端で直角に西の方向へと曲がり、まっすぐに延びていることも確認されたということです。
教育委員会は、「見つかった石の並びは2つの四角形が接する部分で、西日本では珍しい四角形を組み合わせた『前方後方墳』の可能性が高い」としています。
また、四角形をつなぐ部分が短い特徴から、古墳時代前期の3世紀後半に築かれたとみられるということです。
「ノムギ古墳」は、電磁波を使った調査などから、これまでも3世紀後半の前方後方墳の可能性が指摘されていましたが、発掘調査で裏付けられたのは初めてだということです。
古墳に詳しい天理大学の桑原久男教授は、「前方後方墳は東日本に多く、東日本にいた権力者が埋葬された可能性が考えられる」と指摘しています。
これを見たら、「ほおー。これまでは形がはっきり分かっていなかったんだな」と誰でも思うのではないでしょうか?
ところが、同じニュースが新聞だとちょっと異なります。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20121025-00000076-san-l29
ノムギ古墳「くびれ」確認 奈良・天理市教委
産経新聞 10月25日(木)7時55分配信
■埋葬者、東日本と関係の有力者か天理市佐保庄町の古墳時代最初期の前方後方墳「ノムギ古墳」(3世紀末)で、前方部と後方部の接する部分に「くびれ」があるのが確認され、市教委が24日、発表した。専門家は、「前方後方墳は東日本に集中している。埋葬者は、東日本と関係のある有力者の可能性がある」としている。
市教委によると、今回は前方部を中心に調査。後方部の南西端から北約12メートルの地点で、前方部に伸びるくびれ部分を確認した。くびれ部分の周辺では、直径約30センチの葺き石の遺構や、古墳時代初期とみられる土器片も数十点出土した。
調査した天理大の桑原久男教授(考古学)は「前方部の付け根部分の間隔が狭く、古墳時代最初期の前方後方墳の特徴と合致していることが初めて確認された。前方後方墳が集中する東日本との関連を考えるうえで貴重な資料」と話している。
どうですか、「7つの間違い」探せました?(7つありません、一つでいいです)
答えは、ここ
>>古墳時代最初期の前方後方墳「ノムギ古墳」(3世紀末)← 産経新聞
>>「ノムギ古墳」は、西日本では珍しい四角形を組み合わせた「前方後方墳」で、3世紀後半に築かれた可能性が高いことが分かりました。 ←NHK
そうなので、ノムギ古墳は最初から前方後円墳で、3世紀後半の築造であることは判明していたことなのです。
それを、なぜあたかも昨日や今日分かったかのように報道したのか。
ここは恵美の想像ですが、最も悪質な場合は「自分のニュースが奈良県の放送ではなく全国級になるようにあえてねじ曲げた」となります。最も良質の場合は、「単なる無知」。ぜひこれを取材したNHK記者が後者であることを祈っています。受信料を払う身としてはね。
ちなみに、いつ「前方後円墳で、3世紀後半の築造」と判明したのかもはっきりしています。2003年です。
調査をした奈良県橿原考古学研究所がしっかりと明記してます。
http://www.kashikoken.jp/from-site/2003/nomugi.html
天理市ノムギ古墳発掘調査 現地説明会資料(2003年9月7日)
調査機関 奈良県立橿原考古学研究所
所在地 天理市佐保庄字ノムギ塚
調査期間 平成15年4月16日〜現在調査中
調査原因 県道天理環状線建設工事
調査面積 1,200?(平米)
主な遺構 ノムギ古墳後方部周濠
主な遺物 古式土師器(布留0式、東海系、山陰系など)・須恵器など
現地説明会 2003年9月7日(日) 午前10時30分から午後15時(説明は1時間毎に行います。)【ノムギ古墳】天理市佐保庄町字ノムギ塚所在
古墳の形態 前方後方墳
従前は、全長63m、後円部径40mを測る前方後円墳と考えられていたが、平成8年に古墳の北側で実施された発掘調査で、ほぼ直角に曲がる周濠コーナーが検出され前方後方墳である可能性が高まった。また、この調査では円筒埴輪や鰭付円筒埴輪がまとまって出土したことから、この古墳の築造時期は古墳時代前期後半であるとされた。