書評界の神・丸谷才一さんなくなる
本のブログを書いていて、書評界に燦然と輝く巨星について、書かないわけにはいかない。
はずですが、恵美はたいして存じ上げません。
最近まで毎日新聞の書評面の「編集長」だったそうですが、恵美は日曜日の新聞の書評面に載る歴史書をチェックするために、図書館いって、各紙を読みますが、正直いって、毎日新聞のが下のような理由から一番読む気が起きませんでした。
・妙に長い
・本の内容ではなく、書評する人の持論
・そもそも書評している人が名前だけで肩書がないので(養老孟司+歴史研究者以外)だれだかわからない
・ビジュアル性(視認性)ゼロ
書店に行っても、朝日、読売、日経の書評面のコピーは貼ってあるけど、毎日のはあまり見ない。
まるで、読者や書店のほうを向いていない紙面だなあと感じていました。
でも、これらはどうも丸谷才一さんの「書評とはこうあるべし」というきちんとしたポリシーに基づくものだったようです。イギリスの新聞書評のスタイルなのだそうです。
ただ、
・書評する人がどんな人だかわからない
この点だけは、なおしたほうがいいんじゃないかな。「我々が選んだ書評人を、読者みなが知っているのが当たり前である」って、それは何百万部の新聞の読者にはムリがあるんでは。
以下の人たちなのですが、実際の毎週の書評で肩書がなく、名前だけ「どん」と載るだけなのです。横に肩書があれば、「はあ、こういう分野の人がこういう本を書評するのか、ちょっと読んでみようか」となることもあるんではないでしょうかね。
◇「今週の本棚」現在の執筆陣◇
荒川洋治(現代詩作家)
池内紀(独文学者)
池澤夏樹(作家)
伊東光晴(京大名誉教授・経済学)
井波律子(中国文学者)
江國香織(作家)
鹿島茂(明治大教授・仏文学)
加藤陽子(東大教授・日本近代史)
川本三郎(評論家)
鴻巣友季子(翻訳家)
五味文彦(放送大教授・日本中世史)
高樹のぶ子(作家)
辻原登(作家)
中村達也(中央大名誉教授・社会経済学)
沼野充義(東大教授・スラブ文学)
藤森照信(工学院大教授・建築史)
堀江敏幸(作家)
松原隆一郎(東大教授・社会経済学)
丸谷才一(作家)
三浦雅士(評論家)
持田叙子(日本近代文学研究者)
本村凌二(前東大教授・西洋史)
山崎正和(劇作家)
湯川豊(文芸評論家)
養老孟司(解剖学者)
若島正(京大教授・米文学)
渡辺保(演劇評論家)
舟橋全二(イラストレーター)
毎日新聞の書評欄の仕組みが載っていました。
今は、池澤夏樹さんが2代目?編集長のようです。
インタビュー記事です。毎日新聞じしんも「大上段から良書をお薦めする」という傾向があることをほのめかしているように感じました。
でも、これからもうちょっと読みやすい形へと変わっていくのではないでしょうか。毎日の書評もまたチェックするようにしようと思います。
現在の各紙日曜朝刊には、工夫を凝らした書評欄が存在する。いずれも読者を強く意識したつくりだ。新聞社が大上段に構えて本を押しつける時代は終わったと言えるのかもしれない。
↑ ほかの新聞は読者におもねっているけど、うちらは違いますよ、みたいな言いぶりです笑
今週の本棚:20年 新聞の書評欄を革新 編集顧問・池澤夏樹さんに聞く
毎日新聞 2012年05月30日 東京朝刊毎週日曜掲載の書評欄「今週の本棚」が、この4月で満20年を迎えた。スタート以来、編集顧問として独自のアイデアを惜しみなく注ぎ込んだ作家、丸谷才一さんの後を受け、一昨年4月に顧問に就いたのが作家の池澤夏樹さん。評者としても1992年から健筆を振るう池澤さんに、「今週の本棚」が歩んできた20年について聞いた。【高橋咲子】
◇批評文化としての書評
「今週の本棚」は92年4月、編集顧問の丸谷さんがイラストレーターの和田誠さんを紙面デザイナーに迎え、現在と同じく全3ページで始まった。丸谷さんが実現しようとしたのは、イギリス風の書評ジャーナリズム。執筆の基本方針は、(1)話を具体的に展開し挿話、逸話を紹介。ときには文章を引用しながら書く(2)受け売りのできる書評を心掛ける(3)最初の3行で読む気にさせる−−などだった。
「今になると当たり前になってしまったが、当時を考えるとどれほど革新的だったかと改めて思います。以前、別の新聞社で書評を書いていたことがあるが、2週間に1回集まって執筆担当を決める『委員会方式』で、執筆者の署名もなかった。また書評委員の本は取り上げないとか、1年の間に同じ著者の本は取り上げない、などの縛りがあった」と振り返る。
「今週の本棚」の特徴はまず、最も長い評(大書評)で2000字という長さ。さらに批評性を重要視し、本の著者よりも評者の名を大きく扱った。また、編集部が毎週作成する新刊書リストを参考に、執筆者が本を自由に選べる方式を採用した。
「丸谷さんの示した出発点は、書評は批評であるということ。一個人が自分の名において、責任をもって『この本をどう読んだか』を伝える。その場合、評者が誰かは非常に大事です。この人が書いた書評は面白い、となれば、評者と読者の間に歌手とファンとのような信頼関係が生まれる。だから、署名は必須です。また、丁寧に批評するためには、一定の長さもいる。原稿用紙2枚半(1000字)くらいでは、内容の紹介はできても批評性はない。そういう時代から振り返ると、ずいぶん変わったなと思います。毎日新聞のこの欄の影響は明らかに他紙にも及び、日本の書評が変わったということです」
現在の各紙日曜朝刊には、工夫を凝らした書評欄が存在する。いずれも読者を強く意識したつくりだ。新聞社が大上段に構えて本を押しつける時代は終わったと言えるのかもしれない。では、「今週の本棚」で紹介される本には、他紙と比べてどのような特長があるだろうか。
「小説や文学的エッセーを取り上げることが多い。最も文学的ですね。執筆者にも文学者が多い。例えば社会学は論文でも価値が出るが、文学は一冊の本にならないと勝負にならない。そういう意味で文学は書評に適した分野であり、それに手厚いということでしょうか」
この20年間に、時代も大きく変わった。「今の特徴は、本がたくさん出ているということ。また、インターネットのおかげで、誰でも書評家になれる」
そうした時代に、新聞の書評執筆者に求められるのは「選ぶ力」と「読む力」という。「信号手のように『ここに面白いものがあります』と示し、『じゃあ読もう』という人がやってくる。そういう役割なのではないでしょうか」
◇読者の道しるべ 毎日新聞書評欄
丸谷才一さんは、かじ取りを任された毎日新聞の書評欄「今週の本棚」に、イギリスの書評ジャーナリズムに親しんだ青年時代にはぐくんだ「新聞書評の理想」を、惜しみなく注ぎ込んだ。「書評はそれ自体、優れた読み物でなければならない」との信念に基づいた紙面作りは「程度の高い案内者が、本の内容を要約して読者への道案内をする」という、新しい書評となって結実した。
書評の分量を最大で原稿用紙5枚(2000字)に大幅拡充したほか、書評執筆者名を書名や著者名の前に掲げ、各界の一流の書き手が責任をもって本を紹介、評論するスタイルを確立した。この「今週の本棚」は各紙書評欄にも影響を与え、丸谷さんの理想によって日本の新聞書評全体が革命的な進化を遂げたといえる。02年には、書評をまとめた本を対象とする初めての賞「毎日書評賞」の創設にかかわり、常に本を愛し続けた。【井上卓弥】
- 作者: 丸谷才一
- 出版社/メーカー: 中央公論社
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