歴史ニュースウォーカー

歴史作家の恵美嘉樹が歴史のニュースや本の世界を歩く記録です

帰化人が渡来人に変わる瞬間を見てみたい

レジによる途中で引っかかった一冊。

日本古代史と朝鮮 (講談社学術文庫)

日本古代史と朝鮮 (講談社学術文庫)

なんか、買ったことがある気も読んだことがある気もしますが、まあいいかと購入。

出版社/著者からの内容紹介
「日本古代史は、朝鮮との関係史である」とは、古代史研究家・金達寿の主張しつづけてきたことばである。本書は、地名や古墳・神社などを手がかりに日本各地に現存する古代朝鮮遺跡の発掘に執念を燃やしてきた著者がこれらの事実と、記・紀などに残された高句麗百済新羅系渡来人の足跡をはじめ、豊富な文献資料などから「帰化人史観」によってゆがめられた歴史記述を痛烈に批判し、真の日本古代史への道を開示したものである。

著者紹介
1919年、朝鮮・慶尚南道で生まれ、1930年に渡日。日本大学芸術科卒業。作家・古代史研究家。主著に『金達寿小説全集』『金達寿評論集』『古代日朝関係史入門』『日本古代史と朝鮮文化』『古代日本と朝鮮文化』『朝鮮−民族・歴史・文化−』『わがアリランの歌』『行基の時代』『故国まで』『日本の中の古代朝鮮』『日本の中の朝鮮文化』(学術文庫)などがある。

というように戦後の皇国史観を覆すために尽力された方です。
内容紹介の「日本古代史は、朝鮮との関係史である」というのは、まさしくその通りで、恵美の
図説 最新日本古代史』(学研)の中でも大きな柱として展開していまして、古代朝鮮史に関する章は、読者のかたからお褒めの言葉もいただきました。

ただ、「豊富な文献資料などから「帰化人史観」によってゆがめられた歴史記述を痛烈に批判」という部分については、現在ではむしろ「帰化人」をあえて当時はほとんど使われていなかった「渡来人」という事実上の新語で表現するのがスタンダードになるなど、かえって「『渡来人史観』によってゆがめられた歴史記述」になっている気がします。

恵美の「最新日本古代史」では、その両方のバランスが取れる記述を心がけたのですが、そういう本がなかったので、難航しましたw