平成最末期になってまさかの「なんちゃって天守閣」を建造する尼ヶ崎市。イタい状況を覆すたった一つの方法
「私財10億円を投じて“幻の城”尼崎城を再建! 決断した地元名士の地元愛」
と題して、朝日新聞のアエラが、歴史的に明らかに間違っている城の天守閣を創造することを絶賛して、専門家から批判を浴びています。
アエラの記事はこんな感じ。
阪神電鉄尼崎駅から南東に歩いて約5分。川沿いにある公園で、着々と建設が進むのが「尼崎城」だ。 「尼崎城を建てて、市に寄付したい」
2015年、ある人物の申し出をきっかけに、尼崎城再建計画は動き出した。尼崎城は、約400年前の江戸時代初期に築かれ、「大坂の西の守り」を担った名城だが、1873(明治6)年の廃城令を受けて天守や櫓(やぐら)、石垣などが取り壊され、全国的にも珍しく地上から完全に姿を消した“幻の城”でもある。 (略)
そんな尼崎城の再建を申し出たのが、尼崎市で家電販売店の旧ミドリ電化(現エディオン)を創業した安保詮(あぼ・あきら)氏だ。「お世話になった尼崎に恩返しがしたい」という思いから、天守の復元を尼崎市に打診。建設費用は実に10億円以上。それをすべて安保氏が負担するという、願ってもない申し出だった。城の跡地は国史跡に指定されておらず、文化庁の規制がかからないという事情もあり、市が城址公園の整備を担うことで、建設計画はスムーズに進んだ。
今回再建されるのは、4重の天守と2重の付けやぐら。17年12月から、かつての場所からは約300メートル西の公園で、左右反転させる形で建設中だ。
場所も違うし、なぜか左右反転させるというあえて偽物を造るという徹底さ。
これに対して、専門家から当然のように批判がでています。
AERAdot. が報じた尼崎城天守の記事。「城の跡地は国史跡に指定されておらず、文化庁の規制がかからないという事情もあり、市が城址公園の整備を担うことで、建設計画はスムーズに進んだ」と朗報のように記しています。(つづく) https://t.co/Vr2NX5Ki2C
— 千田嘉博_奈良大学 (@yoshi_nara) 2018年5月2日
AERAdot. が報じた尼崎城天守の記事。しかし国史跡であろうとなかろうと、地下に残る本物の尼崎城の遺構を保護して整備するのが本筋。本物の城跡の遺構を顕在化せずに、天守さえ建てれば城の整備と考えるのは、まったく賛成できません。(つづく)
— 千田嘉博_奈良大学 (@yoshi_nara) 2018年5月2日
AERAdot.が報じるなら、行政の情報を鵜呑みにして朗報とするだけでなく、文化財の整備・活用として最善かという視点から適切な批判が伴うべきではないでしょうか。マスコミは、行政の代弁者ではないはずです。(つづく)
— 千田嘉博_奈良大学 (@yoshi_nara) 2018年5月2日
AERAdot. の尼崎城天守の記事。「今回再建されるのは、4重の天守と2重の付けやぐら。17年12月から、かつての場所からは約300メートル西の公園で、左右反転させる形で建設中だ。」と、記します。(つづく)
— 千田嘉博_奈良大学 (@yoshi_nara) 2018年5月2日
城跡の整備では史実にもとづく復元であることが、とても重要です。尼崎城天守の場合、外観復元の天守ですから、見栄えを意識して天守の左右を反転させてしまっては、史実からどんどん離れてしまいます。(つづく)
— 千田嘉博_奈良大学 (@yoshi_nara) 2018年5月2日
錦帯橋から見えるようにと、本来の天守台とは別の場所に天守を復元した岩国城のように、都合に合わせて史実を曲げると、結果として文化財指定の支障になったりします。こうした点もAERAdot.が指摘して、尼崎城天守建設の光と陰を考える記事にできたのではないかと思います。(おしまい)
— 千田嘉博_奈良大学 (@yoshi_nara) 2018年5月2日
と連続ツイートで指摘。
この指摘に対して、「住民の心のためならいいのでは」という容認の意見も投げかけられています。
僕は千田先生と同じく日本史を愛する人間ですが、尼崎城の建設には賛成です。
— 坂本直柔@ZERO (@a_restoration) 2018年5月2日
エディオンの人は、城の遺構に関心があるというより、地元民の心の拠り所を作りたいという思いがある。
文化財としての価値ではなく、これからの街のための開発を選択するのは、アリだと思います。
これに、千田教授がリプで反論します。
史実に沿っていない「虚構の歴史」を、地元民の心の拠り所にするとしたら、それが地域にとってよりよい未来の手がかりになるか案じています。天守さえつくればよいと考えた「整備という名の破壊」を、昭和時代から繰り返し、もうさすがにそういう時代は終わったと信じていました。 https://t.co/xY2o9tIT41
— 千田嘉博_奈良大学 (@yoshi_nara) 2018年5月2日
世間一般はわかりませんが、このリプの流れでは当然ながら、尼ヶ崎市への批判的な意見のツイートが多くなっています。
尼崎城は、本丸跡の学校の移転をして、発掘調査を行い、石垣などの史跡整備をしてから、天守を、本来の場合に再建すべきでした。
— 沢彦 (@higasio1275) 2018年5月2日
今やっていることは、史跡破壊でしかないの
では?
単なる、客寄せの観光施設を、建てたにすぎないのでは?
尼崎城の再建、今回のやり方に関して言えば誤りだと思います。
— 平山裕之 (@mofa_hiro) 2018年5月2日
出来上がるのは、全くのニセモノ。
天守を模した「資料館」と割り切るなら別ですが。
影では「平成エディオン城」と言われています。
個人が私財を投げ打って。。。
— 平山裕之 (@mofa_hiro) 2018年5月2日
確かに一見すると美談ですが、将来的に一企業の宣伝に使われないとも限らない。
市の態度もいただけない。
負のイメージを払拭する起爆剤にしようとしている。
城を再建しただけでは無理でしょう。
そう言えば、現在の和歌山城復興天守(昭和33年)も、松下幸之助の寄付のお蔭だそうです。ただ彼はNnationalの看板を天守閣に付けさせてくれと言って顰蹙を買ってしまったらしいですwひょっとしたら、エディオン創業者の方もその故事を知って、10億円も寄付してくださったのかも...
— waimo (@waimo18) 2018年5月2日
上のように、企業(エディオンやパナソニック)の宣伝になるからいけないという意見もでています。
しかしながら、金持ちのお金だから、企業の宣伝になるからダメなのだという問題ではないでしょう。
多額の寄付金をもとに安易に、将来、「昭和どころか平成も終わるというのに、尼ヶ崎市ってバカだね」と全国の人から笑われる可能性がある偽物の天守閣を嬉々としてつくってしまう。
そうした尼ヶ崎市の見識のなさが最大の問題なのではないでしょうか。
元の記事の引用を続けます。
「駅からお城を見た時に、街を守っているように見えるような雰囲気を大切にしました」(市の担当者) (略)
大気汚染や地盤沈下など、高度経済成長期には多くの公害問題が起こった尼崎市。事件が多く、「ガラが悪い」イメージもつきまとう。市が17年、市外居住者を対象に行ったインターネットのアンケート調査では、回答者516人のうち、尼崎のイメージを「良くない」と答えたのは30.6%。「良い」と回答した割合の倍以上だった。
そういう経緯もあり、尼崎城にかかる期待は大きい。市の担当者は「『公害のまち』といわれ、閉塞感もあった尼崎からよい発信をしたい。皆さんに『建ってよかった』と思ってもらえるようなお城にしたい。『お城が勝手に建った』と思われないように、子どもたちへの周知も進める」と意気込む。
(略) 尼崎城から、新しい「アマ」のイメージを発信できるのか。完成が待ち遠しい。
残念ながら、「尼ヶ崎」のあまりよくないイメージを守り、発信し続けるお城になることでしょう。
これを払拭する方法は一つだけあります。 エディオンがあと1000億円ほど寄付して、内部にものすごい展示物を購入することです。もちろんまがいものではなく、本物の文化財やアートを。
パリのルーブル美術館の前にあるピラミッド、正直ださいの極みじゃないですか。
フランスにエジプトの建造物の偽物ですよ。
でも、ルーブル美術館の中身が圧倒的に本物のため、だれも正面切って「ルーブルってださいよね。偽物の建物だし」とは言いません。言えません。
尼ヶ崎も、京都国立博物館をこえる圧倒的な収蔵品で勝負しましょう。
尼ヶ崎が京都をこえる日が待ち遠しい。