絵描きさん必読?高橋克彦が北斎のすごい発見をしてしまったという話など歴史本書評まとめ(2017年1月8日)
読売新聞の書評欄「本よみうり堂」(2017年1月8日付)では歴史関係の本が3冊紹介されている。
作家で浮世絵研究家でもある高橋克彦氏は『北斎 ポップアップで味わう不思議な世界』(大日本絵画、3500円)を紹介する。絵を切り抜いて立体にする「絵本」的なものだが、高橋さんをして、『とんでもない発見』に結びついたという。なんでも北斎は遠近法の中心点は必ずしも中央ではなく、右下だったり、ナナメ上だったりしていることがこの本の作業をしていく中でわかったそうだ。
北斎の浮世絵は、デフォルメが激しいのに、どこかリアリティがあるというのは、この中心点をずらすことで絵を見ている人がグラグラして落ち着かなくて、それが引き込まれていくという感じですかね。
政治史学者の奈良岡聡智京都大教授は、森山優『日米開戦と情報戦』(講談社現代新書、860円)を書評する。筆者はインテリジェンス研究者だが、常に話題となる真珠湾攻撃陰謀説について、アメリカが日本に最初の一弾を撃たせることを意識していたとしつつ、暗号解読の勝負が日米で、日本だけが劣っていたということはないなどの実態から明快に否定しているのだそうだ。
真珠湾攻撃陰謀説については、下の記事が詳しくて、面白い。
インテリジェンスの戦いが一方的な弱者(日本)ということはなく、でもやっぱり最初に仕掛けるように仕向けていたというのも事実のようだ。なにをもって陰謀とするのか、インテリジェンスがからんでいる時点で、すでに陰謀といえば陰謀のような気もする笑
作家の宮部みゆき氏は、イギリスのジャーナリストT・マーシャル著『恐怖の地政学 地図と地形でわかる戦争と紛争の構図』(さくら舎、1800円)を取り上げる。原題の「PRISONERS OF GEOGRAPHY」(地形の囚人たち)がずばり的確という。アメリカとロシアの気候や地形が逆だったらどうなっていたのか、興味深い。
ちなみに、新年から読書委員が変更したのだが、そこには、土方正志氏という変わった経歴の人が。この人は仙台を拠点に地方出版をしている出版社「荒蝦夷」の代表なのだ。出版社の人が書評をするとは、どうなることやら、楽しみにしたい。