歴史ニュースウォーカー

歴史作家の恵美嘉樹が歴史のニュースや本の世界を歩く記録です

江戸時代にも風評被害があった。想像以上の情報ネットワーク【今週の歴史本書評まとめ】

 毎週、恒例となりました歴史本書評まとめです。
 今週(2013年6月23日)のピックアップは、日経新聞で斎藤修・一橋大教授が書評した、鈴木浩三『江戸の風評被害』(ちくま選書)。
 なにしろ、恵美嘉樹地震サイト「ハザードラボ」でWEB連載している「ハザード今昔」で、この本を取り上げたばかりです。新聞書評より先に出すと気持ちがいいものですね笑 この本は、近い将来、地震が起きる首都圏(江戸)の人は読んでおいたほうがいいです。地震があったときに、風評をツイートしたくなったときに、この本を読んでいたら「はっ。21世紀の人間が、江戸時代の人間と同じことをやっていたら情けない」と思うことができるでしょう。

 連載から引用

 元禄地震が起きたのは1703年のことだ。関東地方を襲ったM8.0クラスの大地震で、津波や家屋の倒壊などによる死者はおよそ1万人にのぼる大災害だった。

 当時の将軍は、第十三巻の富士山噴火でも触れた徳川綱吉である。
 犬をはじめとした動物類を異常なまでに保護した「生類憐れみの令」で最悪の評判だった綱吉だけに、元禄地震が起きたあとは、すぐさま「地震の原因は幕府の誤った政治である」という悪評が広がった。

 噂の伝播力は非常に強く、これには幕府もマズイと思ったのだろう。地震の5日後には風評を流すことを禁ずる法令を出し、庶民の批判を封じ込めようとした。

 が、そんなことで収まるほど、江戸っ子たちの口も重くはない。今度はさらに踏み込んだ、幕府の政権批判が広まった。

『江戸では金星が見えなかったが、それは将軍の悪政のためである。将軍生母の桂昌院従一位という破格の位を朝廷から無理に贈らせたことは天の道理に反するものである。その証拠に、桂昌院の屋敷ほど死者が多かった場所はない」(訳文は鈴木氏『江戸の風評被害』から)

 よほど犬公方の綱吉は恨まれていたのだろう。庶民たちは、彼の母親を引き合いに出してまで、現将軍に対する不満を述べたのである。

 

 三冠を達成した『犬の伊勢参り』以来の三冠が狙えるのではないかと予想しています。(新聞3紙以上の書評に取り上げられること、恵美嘉樹認定w)

 日経新聞では、「子どもたちのフランス近現代史」も書評されていました。学習院大学長による書評です。

日露戦争の裏面史

 読売新聞からは2冊連発。

 気仙沼のカキ養殖業の畠山重篤さんが書評するのは、ブルーバックスの「栄養学を拓いた巨人たち」。畠山さんは「カキの栄養について書かれているかな」と思って読んでみたら、そういうレベルではなくめちゃめちゃ面白かったそうです。
 日露戦争マニアには有名なエピソードですが

 陸軍の戦死者は約4万7000人、なんと脚気で2万7000人が病死したというのだ。「白米主義」のまま戦争に突入した。脚気は伝染病であると主張したという軍医部長森林太郎(鴎外)の責任が問われている。
 海軍は脚気患者はほとんど出なかった。麦飯を取り入れた高木兼寛の功績である。

万葉歌はマンガがふさわしい

 和歌というメディアは、自分の思いや事象をイメージによって伝えるものです。ですから、現代ならば高尚な文学ではなく、マンガのほうが近いと思っています。

 そんな思いを実現化してくれたような本を、万葉学者の上野誠さんが書評しています。
 万葉歌を現代の事象になぞらえてマンガ化しています。たとえば、飛鳥時代天智天皇天武天皇が絶世の美女「額田王」をとりあった話も、大企業での社長と副社長の兄弟になぞらえているのです。

へたな和歌史の教科書より、百倍有益な漫画本。

と絶賛。

 上野さんの書評はいつもあたたかく、ちょっと自虐的で面白い。これが万葉パワーか。
 万葉パワーが邪馬台国を救ったんだもんなぁ。(→邪馬台国説の纒向遺跡がようやく国の指定史跡になる。柿本人麻呂に救われた遺跡【新指定史跡など全リスト付き】 - 歴史ニュースウォーカー

大切なものだから眠くなる。その名は哲学

 本は、簡単に分かるものばかりではいけないと思います。
 理解しようとして理解できなくて眠くなるのは、脳みそがフル回転して、有酸素運動しているから。
 身体のフィットネスと同様に、「哲学」というものも時には「運動」しないとね。
 そんなことで、読売新聞は梅原猛の『人類哲学序説』(書評:橋本五郎氏)、朝日新聞は小林道憲『歴史哲学への招待』(書評田中優子氏)。

 どちらも書評読むだけで、眠気が・・・・・・。本じたいを読んだ日には、フルマラソン級の酸素欠乏しそうです。ああ、訓練がたりない。おやすみなさい。

 眠くなったら、目をさますために冒険ものだ!

海に渡った人類には「冒険心」なんてなかった

 朝日新聞には冒険家の角幡唯介さんの書評。角幡さんは「空白の五マイル チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む (集英社文庫)」などのみずから冒険ノンフィクションをたくさん出しています。
 その冒険家が、アフリカを出て、さらには太平洋やインド洋にこぎだした人類の偉業に「冒険性」がなかったとするこの本に驚く。
 そりゃ驚くだろう。

 古代人はいつでもどこからでも帰れるという自信を持って外洋に漕ぎ出した。つまり外洋航海は日常的な沿岸航海の延長線上であり、未知への旅立ちが冒険ではなくなるほど彼らは海と親密な関係を築いていたというのである。

 なるほど、これは面白そう。

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