「従軍慰安婦問題」の歴史は意外と新しい
慰安婦問題というのは、新しい問題なのです。
恵美嘉樹は、近現代史についてはあまり詳しくはありませんが、慰安婦問題が「社会問題」となるまでの出来事をざっとまとめてみました。
売春宿というのがあったのは事実ですし、「合法だ」「自分から」といっても、山崎朋子『サンダカン八番娼館』 (キンドル版)に出てくる日本人の娼婦のように、何人であろうと、どんな事情があってもつらい経験です。
この従軍慰安婦問題については、苦しんだ女性たちへの思いは持ちつつ、歴史的な事実と戦後の左翼的な事業でつくり出された物語は峻別するべきではないでしょうか。
衝撃の朝日新聞の元旦スクープ
「最初」の慰安婦問題は、1980年代に、吉田清治という山口県の男性が、戦時中に済州島で朝鮮人を奴隷狩りしたという衝撃的な告白をしたことからはじまります。
「私の戦争犯罪―朝鮮人強制連行」 (三一書房、1983年)という本になっています。ご存じの人はご存じのように三一書房は左寄りの出版社として今でも活躍?しています。
朝鮮民主主義人民共和国―「よど号」グループの朝鮮レポート (三一新書)とか最近では原発と御用学者―湯川秀樹から吉本隆明まで― (さんいちブックレット008)
など。
「犯人の告白」だけに説得力があったのですが、その後、「これは大変だ」と行われた現地調査などで全く裏付けがとれず、今では「強制連行」があったとする人たちも、吉田告白は信用していません。
ところが・・・
朝日新聞が1991年8月に「朝鮮人の従軍慰安婦」がいた!と報じました。
慰安婦だった女性は実名で名乗り上げて、日本政府に謝罪と補償を求め、東京地裁に民事訴訟を起こしました。
政府は、慰安婦はいたが、民間業者が運営していて、国の関与はないと主張。(裁判でも国の主張が認められています【追記】コメントいただきありがとうございます。「国の関与がない」を認めたのではなく、国が主張するもう一つの理由である「二国間ですでに解決すみ」を認め、元慰安婦には請求権がないようですね)
ところが、ところが、翌年の1992年の元旦のスクープとして朝日新聞が、「慰安所 軍関与示す資料」との記事を載せたのです。きのう(2013年3月8日)の国会で、維新の会の中山成彬議員が示して話題になった例のやつです。
朝日新聞調べではなく、中央大学の吉見義明教授が、防衛庁の研究所で資料を見つけたというものです。
90年代の朝日新聞というのは、今よりもずっと「信頼性の高い」媒体でした。ですから、政府もビックリたまげたわけです。
ちゃんと防衛庁にいって資料を精査すればいいのに、
お正月でもあり、さらには宮澤首相が月内に韓国を訪問するというスケジュールもありました。
さらにさらにタイミングの悪いことに、当時の官房長官はあの「加藤紘一」。
加藤官房長官がさっさと、「お詫びと反省」の談話を出したことで、日本政府が軍関与を認めたという「事実」ができてしまったのです。
さらに93年には、河野洋平官房長官が軍関与を公式に認める内容の「河野談話」を発表しました。
少なくとも韓国の人には「日本政府が2度認めて、2度謝った」という厳然たる事実によって、「慰安婦強制連行は日本軍が行った」ということを厳然たる歴史上の真実と思いこむようになったのです。そりゃあそうでしょう。相手(日本)が言っているんだから。
ただ、その後の論争をみるに、強制連行や国の直接的な関与というのはどうも、うーん???って感じ。(関与はなかったと証明するのも悪魔の証明で難しいのですが)
しかし、慰安婦問題を「歴史上の事実」として固定化したのは、韓国人や韓国政府というよりも、「日本」の朝日新聞と当時の自民党政権であったことは、わたしたちも謙虚に受け止めないといけないと感じます。
そうでないと、「お前ら(日本)が言い出して、認めて謝っておいて、今さら『あれはウソだ。韓国が悪い』はないだろう」と韓国の人たちが怒っても、まあ仕方ないかな。
中山成彬議員の映像を見るだけでは、中山議員の言っていることが正しいのかどうかも、よくわからないので、まずは朝日新聞がきちんと検証して、報道していただきたいものです。