歴史ニュースウォーカー

歴史作家の恵美嘉樹が歴史のニュースや本の世界を歩く記録です

高校の校舎を建て替えようとしたら下から遺跡が出てきたので木造校舎にします、の英断@神奈川県

 神奈川県の高校が耐震性の問題から建て替えをしようと思ったら、そこが古代の「市役所」(高座(たかくら)郡役所跡)だったことがわかって、急遽、コンクリートから木造の校舎へと変更することが決まったそうです。

 いや、そんなことあるんですね。

 高校の敷地に古代の郡役所跡があったことではなく、現代のお役所がこんな大がかりな設計変更を認めることに驚きです。三内丸山とか吉野ヶ里のように「人を集められる場所になる」という投資的な効果が見込まれるケースとちがって、純粋に遺跡保存のためですもんね。

 神奈川県といえば、「ビバ民営化」という適当な政策で、県の文化財発掘組織「かながわ考古学財団」がつぶされたところ。

「かながわ考古学財団」解散へ 「質落ちる」学界が総反発(朝日新聞、2007年02月17日)


 恵美嘉樹は発掘の民営化も否定しませんし、民間の発掘会社もいい仕事をしていると思います。「公務員の調査員でないとちゃんと発掘調査できない」というような「お上至上主義的」な意見には賛成できませんでした。

 しかし、地元の歴史をつかさどる公の機関をなくすとなると、「神奈川県の歴史なんてどうでもいい」と県自身が表明しているのと同じことになるので、まったく信じがたい政策でありました。

 と、思ったら、そのときの知事さんが神奈川県知事を放り出して、なんと隣の東京都知事にくら替えしたのですから、やっぱり「地元の歴史・文化に興味がなかったんだなぁ」と。。。(まじで、そんな気持ちで県知事なるなよ・・・)

 まあ、そんな残念な知事がいなくなったとたんに、こんなにすばらしい対応ができるのですから、やっぱり政治って、投票って大事ですね。

(と、いいながら、かつては私もこの知事のことも、横浜市長のことも、「なんか花があるし、改革してくれそうだし、いいんじゃない」と思った黒歴史をもっているんですけどね・・・)

神奈川新聞より

 
 改築計画が宙に浮いていた県立茅ケ崎北陵高校(茅ケ崎市下寺尾)が、木造校舎として生まれ変わる見通しになったことが18日、分かった。耐震性の問題から建て替え対象になったが、敷地内で遺跡が発掘されたため計画策定が難航。生徒はプレハブの仮設校舎で7年間学んでいる。県教育委員会によると、木造校舎への建て替えは県立高校で初めてのケースになる。

 (略)

 建て替えは当初は校庭を活用する計画だったが、02年に古代の役所跡「郡衙(ぐんが)」などの遺跡が見つかったため頓挫。既存の鉄筋コンクリート(RC)校舎は老朽化で耐震性に問題があることから、生徒は06年春から約200メートル離れた仮設校舎で学んでいる。

 遺跡をできるだけ破壊せずに建て替えるには既存校舎の基礎(土台)を活用するしかなく、「RCより軽量な木造なら基本的に現状の基礎の上に建てられる」(県教委)ことから有力案として検討してきた。

 現段階では2階建てを想定。一般に木造はRCよりコスト高になるが、県教委はさまざまな工夫で抑制する方針。できるだけ県産材を使うことも検討するという。

 いい記事なんですけど、「遺跡なんてでてきて困ったよね」みたいなトーンなのが気になりました。


 昨年10月には、こんな記事も神奈川新聞にありました

 茅ケ崎市内の下寺尾遺跡群の見学会が13日に開かれ、参加者約30人が古代の役所や寺院跡周辺を歩いて回った。

 出土品の一部を展示している市文化資料館主催。下寺尾地区は県立茅ケ崎北陵高グラウンドから古代の高座郡の役所「郡(ぐん)衙(が)」跡が、その南側に寺院「七堂伽(が)藍(らん)」跡が見つかっており、市は国史跡指定を目指している。

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