歴史ニュースウォーカー

歴史作家の恵美嘉樹が歴史のニュースや本の世界を歩く記録です

シェールガス終わった【シェールガスから学ぶ武田金山の活用法←ごめんなさい、タイトルだけで、そんな中身はないです】

 今回は歴史ニュースではないですが、地理・地学ニュースとして
 シェールガスについて少々。

 アルジェリアでの悲劇をテレビで見てますと、単純に、
 「そんな危険なところで天然ガス掘るんでなくて、
 今はやりのシェールガスをアメリカから買えばいいんでは」と思ってしまいました。

 飲み屋でおじさんも言っていました。
 「NHKクローズアップ現代でも言ってたで、シェールガスは安くて、ガッポガッポ儲かる」って。
 
 ところが、
 世の中そんなに甘いもんではないですね。

 シェールガスは、これまで竪堀していたガス油田を、横方向にも掘るというのが技術の根幹なわけですが、

 なんでアメリカの天然ガスがめちゃめちゃ安いかというと、別にシェールガスがドンドン出るからではなく、

 エネルギー難民の日本や中国が、「夢の油田やぁ!」とたくさん投資したために、
 本来は採算が合わなくて廃坑になるレベルでも、手元にお金がたくさんあるから、仕方なく掘り続けている
 というのが現実なようです。

 まあ、バブルですな。これは、はじけますな。

 経済的な感想は、歴史ニュースサイトとしてはここらへんでおいといて、
 地学的に、地中の横堀りという手法が面白いかったので、引用します。

 武田の忍びも、この掘削技術をマスターしていたら、武田金山の復興ができて、真田幸村につぎ込んで、
 新・武田真田軍なんて、できていたら面白かったですね。(と無理やり歴史ネタに)

古来の油井やガス井は、真下に向かって掘るだけでした。掘り進んで、石油や天然ガスが含まれている層にぶち当たれば、後は地面にかかる大きな圧力で、自然に原油や天然ガスが地表に噴き上げて来るわけです。

しかし長年生産を続けると、圧力が下がり、ポンプの力を借りないと、汲みあげることができなくなります。ドンキー(ろば)と呼ばれる、首振り型のロータリー・リグが使用されるのは、そういう場合です。それでも石油や天然ガスが取れなくなると、それらの井戸は休止井として放棄されました。

大手石油会社はこうして「喰い散らかした」油田を手放し、海外の大型油田を取得することに経営のフォーカスを傾けました。そのような「残りカス」の油田は、言わば氷を一杯に入れたグラスからストローでジュースを飲んで、ジュースが少なくなったので音が出る状態と形容できます。


国際的なネットワークを持ち、潤沢な資金があるオイルメジャーは、未開の、オフショアなどの油田でホームランをかっ飛ばした方がリターンが大きいので、去ってゆきました。それらの残り物の油田を買い取ったのは、オクラホマ州テキサス州に本社を置く、独立系の小さな石油・天然ガス会社でした。彼らは「ホームランか、三振か?」という賭けを避け、くたびれた油田を養生しながら細々と生産するというスタイルでした。

そのような先駆者の一人にチェサピーク・エナジー(ティッカー・シンボル:CHK)があります。同社の創業者のオーブリー・マクレンダンは一介のランドマン(Landman)から身を興し、一代で全米第2位の天然ガス会社を築きました。ランドマンとは、石油や天然ガスが出そうなところの見当をつけ、その土地に眠っている地下資源の利用、処分する権利(これをミネラルライツといいます)を買い取る仕事をする人です。

(略)

チェサピーク・エナジーは1993年2月にIPOされますが、同社は大手石油会社が「喰い散らかした」残りモノの天然ガス田をホリゾンタル・ドリリング(水平掘り)という方法で開発すると、効率良く天然ガスが閉じ込められている地層にリーチ出来るという考えを持っていました。

一旦、垂直に掘った油田のドリルを抜いた後、斜め、若しくは水平に走れる自走式ドリルを降ろして、横に広がっている天然ガスや石油が閉じ込められている地層をぐんぐん掘り進むというのが、そのやり方です。ドリルにセンサーをつけるなどの方法で、ちゃんと石油や天然ガスがある場所を貫通しているかどうかを確かめられるようになったという、技術面での進歩も、これに寄与しました。

次にクレー(平石)のようにちょっと力を入れると割れやすい石にヒビを入れることで、天然ガスや石油を流れやすくするという技術も開発されました。パーフィング・ガンと呼ばれる、発破(はっぱ)の装置です。これを地中で爆破させることで、ヒビを入れるわけです。さらに爆破した後の割れ目にプロパントと呼ばれる特殊液を高圧で流し込む事でヒビを大きくし、次にその特殊液をポンプで汲み出し、天然ガスの流れを良くするという手法も編み出されました。それらの一連の作業を破砕法(フラッキング)と言う訳です。この破砕法で、これまでシェール(Shale=頁岩けつがん→泥が固まり板状になった地層)に閉じ込められていた天然ガスも、効率的に生産できるようになったのです。

勉強になりました。

シェールガス革命とは何か

伊原 賢 東洋経済新報社 2012-08-01
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このMarketHackの情報分析力はすごいですね。
NHKは、震災報道はすばらしいけど、海外情報は単独だと全然表層的だと、改めて実感。

歴史ニュースウォーカーも、Market hackが巨大ニュースサイトに発展したときには、ぜひグループ入りしたいものです。History hack、うーん、かっこいいかも。