【犯人はお前だ?】○○寺と書かれた土器が出土した場所がお寺だったとは限らない
歴史ニュースではないので匿名にしますが、ちょっと引っかかる変なニュースがありました。
なんとか私立高校の教師えみよしきさん(仮名)が高校を停職処分の取り消しを求めて訴えました。
この高校では、えみよしきさんの姓のイニシャルの「E」と書かれたボイスレコーダーを使って、なにものかが、えみさんとは別の教師の授業を無断で録音していました。
学校はEと書いてあるからえみさんの仕業だとして、えみさんは否定したものの、停職処分にした
というものです。
真相はよく分かりませんが、短い記事だけでは、イニシャルが書いてあったというだけで、その人のものかも分からないのに、(その人のものだとしても置いた人は別かもしれない)処分しちゃうのかぁ?と疑問を持ちました。
このニュースで頭に浮かんだのが、奈良・平安時代の遺跡からよく出土する墨書土器というものです。
土器に墨で、字(ときどき人の似顔絵)を書いたものです。
季刊考古学121号(2012年11月発行)の特集「山寺の考古学」で、
山形大准教授の荒木志伸さんの「墨書土器からみた山寺」と論文が載っていました。
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ちなみに山寺とは、山形のいわゆる山寺(立石寺)限定ではなく、山岳寺院ということです。
墨書土器の中で「寺」と書かれたものは全国でもとても多いそうです。
これまでの定説では、「寺」と書かれた土器がでれば、それはそこに寺があったんだよという証拠になってきました。
ところが、
しかし、平野部と離れた空間である山寺は、ほかの施設が近隣に存在することは少なく、そこが寺であることは自明で、区別のために「寺」と墨書する必要は本来ないはずである。
土器への墨書行為および大量の廃棄行為は9世紀段階までは、平野部において寺院内よりむしろ官衙周辺や集落内によくみられるものである。
では、どうして寺でなく、村などで「寺」という土器が見つかるのでしょうか?
山寺内の何らかの儀式などに参列する人々の存在や、山寺内での儀式などの諸活動を支えた山麓域との行き来、つまりは平野部からの供給などに関わり墨書されたものとの想定は困難であろうか。
新説の部分は、ちょっとあいまいで抽象的ですが、ぶっちゃけていうと、初詣のときに「購入」するお守りやお札みたいなものってことでしょうかね。
たしかに、お守りやお札は「寺社」から持ち出されて、俗の世界に置かれるのが今でも普通です。
1年たったお守りは神社さんに持っていき、新しいものと引き換えに預かってもらい、「どんと焼き」するわけですが、家の家庭ゴミにポイしちゃう人ももちろん、相当数いるでしょう。
というわけで、「これはえみさんのもの」とボイスレコーダーに書かれていても、それはえみさんが犯人だという証拠にはならない、ということが言いたかったのです。じっちゃんの名にかけて。