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歴史ニュースウォーカー

歴史作家の恵美嘉樹が歴史のニュースや本の世界を歩く記録です

画期的!液状化現象、津波石が「天然記念物」に指定。縄文発祥の地、西南戦争も史跡に

文化庁文化審議会が16日、史跡、天然記念物などの指定答申をしました。

世間は、解散で大騒ぎですが、今回の指定は近年まれにみるかなりニュースな要素が多いのです。ニュースにならないでしょうが。

というわけで恵美嘉樹が重要な指定物件について解説していきます。

「暴走大臣」田中真紀子大臣にひっくりかえされなければいいですね。
衆院解散して議員ではなくても、大臣は大臣のままなんですよね。うーん、心配。

  • 最古の土器の出生地

まずは大平山元遺跡(青森県東津軽郡外ヶ浜町)。

=写真は外ヶ浜町のHPより
ここはすごい。

縄文時代で最古の土器が生まれた地なのです。縄文時代のはじまりは土器ができたこと、つまり縄文文化発祥地なのです。
それだけでも充分にすごいのですが、ここで出た最古の土器は、なんと氷河期時代の1万5000年前だったのです。

これまで、縄文土器というのは氷河期が終わって暖かくなって、ドングリやらを実る木がどんどん増えて、その実を加熱するために土器を作ったということが定説だったのです。
ところが、ここでの土器が出たので、常識がガラガラとひっくり返されたのです。

寒い時に土器が発明された理由については、分かっていません。今のところ「偶然」というのが有力説。


恵美嘉樹なりの謎解きをしてみましょう。

謎をとく鍵は遺跡の立地にあります。ここは北日本で有数の、石器となる石材が豊富にとれる場所がすぐそばにあります。

旧石器人はもちろんまだ定住生活していないので、歩ける距離はハンパないです。

で、日本中からここにいい石を求めて人が集まってくる。この頃の人口はすごく少ないので、たくさんの人が会うというシチュエーションがそもそもない。

ところが、ここにはたくさん人が集まっている。

人と人が会話をすると、アイデアが生まれる。それで、どこぞのスティーブジョブスが、どこぞのマークザッカーバーグのアイデアを試してみて、土器(iphone)を作っちゃった。

いかがでしょうか。
ちなみに「おおだいら」ではなく「おおだい」とよみます。

これについてはこの本↓

縄文はいつから!?―地球環境の変動と縄文文化 (歴博フォーラム)

縄文はいつから!?―地球環境の変動と縄文文化 (歴博フォーラム)

 「西南戦争史跡」(熊本県熊本市玉名郡玉東町)
 これまたすごいですね。田原坂ですよ。たばるざか!
 明治維新のヒーロー西郷隆盛が、一転、悲劇のヒーローとなる西南戦争(1877年)の舞台となった田原坂ほかの激戦地がついに史跡になりました。
田原坂から眼下を見下ろす。恵美嘉樹撮影

=地図はグーグルマップに加筆


 田原坂は、南の熊本城(政府軍が籠城していた)を救援するための新手の政府軍が、西郷軍が守る熊本平野の入り口である田原坂を突破しようとした戦いです。地図をみると分かるように、事実上の攻城戦です。

 明治維新以降、戦いの主力は重火器類です。おそらく「田原坂城」のまわりは川や湿地なので、大砲を通すにはこの田原坂を強行突破するしかなかったのでしょう。

 ほかにも戦国時代の1578年(天正6年)から8年にわたり、織田信長と別所長治が戦った
 「三木城跡および付城・土塁」(兵庫県三木市)も史跡に指定。ここは、秀吉が攻めたのですが、最後には別所が餓死しそうな住民たちを守るために自刃するというドラマチックな展開で有名です。
 この史跡は史跡名の「三木城」よりも、秀吉が包囲網をしいた「付城(つけじろ)」のほうが戦略的に重要というかわった史跡になりそうです。

 関連記事 
三木市の発表資料(PDF)
三木城史跡に -毎日新聞

  • 多数の震災・天災の痕跡が天然記念物!

 
 史跡部門は、知的な興奮を誘う重要な遺跡が指定されたのですが、実は恵美嘉樹最もニュースだと思うのは、天然記念物部門の指定です。

 新規の4件のうち、じつに3件が地震津波や火山噴火の痕跡なのです。

 これは指定しようとした文化庁担当者の「歴史や自然を学ぶことが現在と将来の人間を救うことができる」という思いが伝わってきました。

 これから1か月間、街頭では「公務員はクズ」との連呼が聞かれると想像できますが、このようにちゃんと、国民のことを思って仕事をされている公務員もいるんだと、心の片隅にとどめておこうと思いました。


一つめは、

相模川橋脚(神奈川県茅ヶ崎市

なんで橋脚が天然記念物?と意味が分かりませんが、大正時代の関東大震災によって起きた「液状化現象」によって、鎌倉時代の橋脚がズズズズズズと持ち上がってきたのです。橋脚自体はすでに史跡ですが、今回は「液状化現象」を天然記念物に指定したのです。

この強引な論理!さきにも書いたように担当者の意気込みが伝わります。こういう強引さはオーケー。


二つめは

天降(あもり)川流域の火砕流堆積物(鹿児島県霧島市

文字通り、火砕流の地層です。3層あるそうで、その最も新しい噴火は、2万5千年から2万2千年前の鹿児島湾北部(姶良カルデラ)が大爆発。ATフィールドを拡大させました、というのは冗談ですが、よく北海道を含む全国の地層で出てくるAT火山灰とはこいつのことです。


鹿児島湾ってカルデラ、つまり噴火口なのです。よく見るとそんな形しているでしょう。


大きな地図で見る

そして三つ目が
石垣島東海岸津波石群(沖縄県石垣市

津波前後の人口の増減や石の移動が分かる文書(「大波之時各村之形行書」など)が存在することから、あらためて注目されている1771年に起きた明和大津波で、標高の高い場所にまで運ばれた4つの石が、津波石として初めて指定されます。
明和大津波は、最大30メートルの津波で1万2000人もの犠牲者がでました。


こうした指定によって、震災の記憶が世代を超えて伝わり、いざ天災が起きたときに一人でも多くの命が救われることを祈っています。

そのほかの指定には

  • 歌舞伎などの「安珍と清姫物語」で知られる、和歌山最古の寺、道成寺

ここはそもそも本尊の千手観音像が国宝なんですよね。

=写真は道成寺HPより
関連記事 道成寺 国史跡に 日高新報
関連記事 「手だけ奈良時代の仏像の謎、蛇伝説のお寺で」-恵美と嘉樹の歴史ニュース

  • 渡来系「東漢(やまとあや)」氏の「与楽(ようらく)古墳群」(奈良県高取町)

100近くある古墳のうち、与楽鑵子塚(かんすづか)、与楽カンジョ、寺崎白壁塚の3基が指定に。国内最大級の石室をもちます。
東漢氏は、「飛鳥の先住民」なんて説もありますね。
関連記事 毎日新聞
「与楽カンジョ古墳」-ブログ「奈良の名所・古跡」(石室内の写真あり)

 未盗掘の円墳。なかからは「よみがえるな!」と願って破壊された石棺が。
 詳細な解説は、このエントリーをどうぞ「日本にもゾンビがいた」-恵美と嘉樹の歴史ニュース&BOOK
 出雲弥生の森通信(スタッフブログ)


全部の指定の詳細は
文化庁のHP(PDF)でもどうぞ


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