「富士山」と書きたかった?富士市で「冨」の文字出土
奈良・平安時代には、土器に字を墨で書くことがよくあります。
たいてい一文字だけなので、文章ではありませんので、所属(この器は
誰のもの)や用途(この器はどんなときに使う)を示しているマークだと思われます。
墨書土器(ぼくしょどき)といいます。
こうした考古学用語も「すみがきつちのうつわ」と読んだら、ちょっと分かりやすくなりそうですが、いかがでしょうけ。
自分の名前の一部などが書かれた墨書土器がどんなものがあるか、知りたい人は、ここで検索してみましょう。
明治大学古代学研究所というところがデータベースを公開しています。
http://www.kisc.meiji.ac.jp/~meikodai/obj_bokusho.html
出土土器に「冨」に似た漢字…静岡
=土器の底面に墨書きされた「冨」に似た文字(富士市教委提供)
静岡県富士市厚原の「中桁・中ノ坪遺跡」(奈良時代〜平安時代)で、「冨」に似た漢字が墨書きされた土器=写真=が出土した。土器は9世紀に作られたものとみられる。同市教委は「現在の『富士』や『富士山』の表記につながる出土品かもしれない」と期待を寄せている。「冨」に似た漢字は土器の底面に書かれている。富士山の「富」の字とは異なり「わかんむり」で、冠の下の「一」がないのが特徴だ。同市教委文化振興課によると、同遺跡の東の「東平遺跡」で2000年、「布自(ふじ)」と墨書きされた8世紀の土器が出土したほか、富士市今泉でも、今回と同じように読めそうだが判読不能の文字が書かれた土器が見つかった例があるという。
同市教委の説明では、土器に墨で文字などを書いたものを「墨書土器」といい、地名や身分、方位が書き込まれているほか、「財」「吉」などめでたい言葉として漢字が書かれていることもある。今回の「冨」に似た漢字も同様の意味が込められている可能性があるが、「万葉集の時代にはこの地が『ふじ』と呼ばれていたことは明らかで、現在の表記である『富士』のルーツである可能性は否定できない」(同課埋蔵文化財調査室)という。
同市教委は今後、さらに分析を進め、奈良時代から平安時代にかけての「富士」や「富士山」の姿を明らかにしていくという。
(2012年10月26日 読売新聞)
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