もしも貴族が欲望丸出しだったら、、、
- 作者: 繁田信一
- 出版社/メーカー: 角川学芸出版
- 発売日: 2008/11/25
- メディア: 文庫
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なんとも素敵なタイトルじゃあ、ありませんか。もともと柏書房という出版社から単行本で出ていたものが文庫化されたのですが、ともに同じタイトル。文庫化されると変更することもあるが、すばらしい!から変えなかったんだろうな。わかります。
「拉致」「強姦」「暴行」「生首」「屍を晒す」なんとも物騒な言葉が並ぶ本書の目次。
それでは「とんでも本」なのかといえば、決してそうではない。著者の繁田さんは、平安時代の日記「小右記(しょうゆうき)」を丹念に読み解き、貴族社会のなまなましい事件を紹介しています。
源氏物語の光源氏に代表される優雅な平安貴族。そのイメージとは180度違う貴族の顔があるんだよ、貴族だって人間、結構ひどいことはやっているんだよ。そんな実例が紹介されています。
たとえば、藤原道長。「この世をば」で始まる歌に述べられているように、最高権力を手中にし、望みはすべてかなえてしまった貴族の中の貴族。彼は意にかなった人が合格するように、役人への登用試験の監督を拉致しています。なんと乱暴なんでしょう。
道長の息子で藤原能信という人がいます。道長のあとに権力を握り平等院をつくった頼通とは異母兄弟にあたりますが、かれは強姦未遂の事件を冒し、逆に返り討ちにあって拘束されてしまった貴族を奪い返そうとして従者を派遣した。しかし、能信の従者が逆に殺されてしまう。なんともいえない事件だが、モラルなどかけらもない貴族たちであることはまちがいない。
また花山天皇の従者と貴族・藤原隆家・伊周の従者とがけんかし、生首をきって持って帰った、という事件も起きている。
平安貴族とは、結構うらでいろいろやってるわけですね。今度「武士は人殺しが苦手だった」とか「天皇は神様が嫌いだった」みたいなネタでもさがそーかなぁ。