堀内孝雄よ、永遠に!幕末の華、戊辰戦争の真実、、、ではなかったみたい。
- 作者: 石井孝
- 出版社/メーカー: 吉川弘文館
- 発売日: 2008/01
- メディア: 単行本
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1984年に同社から出たものの復刊です。石井氏は大阪大、横浜市立大、東北大、津田塾大教授などを歴任し、1996年に亡くなられています。
小学生のころに年末ドラマ「白虎隊」で涙を流した恵美にとって戊辰戦争はたまらないテーマです。戊辰戦争と聞くだけで『いーとーしーきーひーびぃわぁ』と歌が頭の中に流れます。
本書は、「戊辰戦争の本質を『絶対主義形成の二つの途の戦争』と規定し、天皇制と大君制(徳川)の対立を幕末段階から説き起こすことによって鮮明にした」(裏表紙の説明)とあります。
しかしなんと、この主テーマは、巻末の家近良樹・大阪経済大教授の解説によって、学界ではすでに否定されていることが明かされてしまうのです。(やっぱり本は後ろから読みましょう)
「このような(石井氏の*)史実の誤認が、最終的に(徳川*)慶喜が大政奉還を行った目的を「大君制の創設」にあったとする解釈にたどりつかせることになる。(略)そして、私は(というよりも、近年の幕末中央政局に関する支配的な見解といった方が正しいであろう)、この見解を当然のことながら支持できない」(P353)
(*)は恵美の註
「また、石井氏の採る明治維新によって天皇制絶対主義が成立したとする見解は、いまではすでに通説的な地位から降りている。それゆえ、絶対主義云々といった枠組みに基づく問題提起それ自体が成り立たなくなっていると云ってよい。」(P354)
おいおいおーい! 話しが違うじゃないか!
いくら名著(名著なのか?)とはいえ復刊していいのか。それに3000円以上(税抜き2900円)したんですけど・・・。
すっかりハシゴを外されて、かなり凹みましたが、気を取り直してパラパラと読んでみるとこれがなかなか面白い。文体も躍動感があり読ませます。
しかも、そもそも「この本の主テーマは間違っている」という前提で読んでいるので、逆に自分で新たな問題提起ができるのではないか、ここの論は間違っているのではないか、などと批判的に考えることができます。
今はやりの地頭力トレーニングですね。
恵美が前半をめくりながら思った仮説は
西国連合(薩摩や長州)と東国連盟(会津など奥州列藩)による争い、つまりそこに実質的な勢力としての「天皇」と「将軍」は存在しないのではというものです。著書とは全く逆の結論です(汗)
天皇も将軍もどうも、西と東から担がれている「カリスマ」に過ぎない感じがしているのです。
天皇は取り替えることが不可能ですが、将軍は鎌倉、室町、徳川と変更可能です。武士の棟梁たる将軍の地位を、薩摩の島津でも長州の毛利でも狙ってもよかったはずなのに、それがなかった。それはなぜなのか。
結構面白いんじゃないかなぁ、この説。どうでしょう? 井沢元彦さん、逆説の日本史に採用しませんか?
(笑)
300ページ以上あるのでまたゆっくり読むことにします。きょうはこの辺で。