弥生の開始年代確定?かな
- 作者: 古代学研究所
- 出版社/メーカー: 大和書房
- 発売日: 2008/02
- メディア: 単行本
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今回は雑誌の論文からです。
ビジネス書などのイメージが強い大和書房が(おそらく)趣味でやっている季刊「東アジアの古代文化」(2008年冬号、134号)です。
特集は「弥生稲作の開始年代」
2003年5月19日の朝刊各紙に1面トップで報道された「弥生時代のはじまりが500年さかのぼる」について、その後の研究を国立歴史民俗博物館の考古研究系准教授・藤尾慎一郎氏がまとめたものです。
開始年代遡上論については、一般向けに説明する本が少なく、ちょっと問題ありな状態です。
そのため、教科書を製作する人も「従来の年代ではまずそうだし、でも新しいのも本当かどうか判断できない」という宙ぶらりんなのではないでしょうか。
ある意味で調査をしている国立歴史民俗博物館のスタッフ以外は判断できない問題なので、彼らがいかに情報公開するかというのは重要で、その意味で今回の論文は要チェックです。
結論をまとめると、
弥生時代は「紀元前九三〇〜九〇一年ぐらいには始まっていたのではないかという見通しをもつことができたのである。」(P8)と、紀元前10世紀としていた開始時をさらに絞込み、
そしてその後、
「九州北部に始まった水田稲作は、前八〇〇年頃に高知、前七〇〇年頃に大分市や今治平野、前六〇〇年頃に神戸市付近、前五〇〇年頃に山と盆地や東海地方、そして前四世紀に日本海沿岸を一気に駆け上がり、東北北部へと到達する。九州北部で始まってから約五百年後のことである。
日本列島の中で水田稲作がもっとも遅く始まったのは南関東で、紀元前二〇〇年ごろである。」(P5)
と、各地の年代を詳細に報告しています。これまでの土器編年という属人的な判断ではなく、科学的なデータの積み上げであることが重要です。
日本列島のすみずみまで行き渡るのに実に500年かかっていたわけですが、これまでは、それぞれの地域にいつごろついたのかという点がカバーされていませんでした。
今回、ほぼ全国(出雲が抜けているのが気になりますが)を網羅したことで、弥生のはじまりについての年代観はほぼ間違いないと言えるようになったのではないでしょうか。
ちなみに2003年の発表時に、弥生の開始時が前10世紀から前9世紀とした推定が外れる確率は「ハズレの確率は二千分の一という制度の高いものであった。」(P6)だそうです。自信があった推論を完璧に補強したということでしょうか。
すきのない報告であり、恵美はもろてをあげて歴博の年代観に賛同したいところですが、それも怖いです。同じ大和書房から歴博への科学的なアプローチによる反論を展開する『理系の視点からみた「考古学」の論争点』(新井宏著)が出ています。
- 作者: 新井宏
- 出版社/メーカー: 大和書房
- 発売日: 2007/08
- メディア: 単行本
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こちらは積ん読状態なので、近く読んでみたいと思います。